研究課題
今年度の研究においては、前年度のNG粒子スペクトルの解析結果と、傾角反強磁性相が面内スピン間は強磁性的相関を、一方面間のスピン間は反強磁性的相関を持つという性質を比較することで、NG粒子が面内成分のスピンに対するスピン回転対称性の破れに伴うものであると解釈できることを示した。このことによって、傾角反強磁性相におけるNG粒子に対する、新たな知見を得ることができた。上記の傾角反強磁性相におけるNG粒子の性質に関連した研究として、最近、resistively-detected nuclearmagnetic resonance (RD-NMR)を用いた、ν=2二層量子ホール系における核スピン緩和の実験が報告された[1]。その結果、傾角反強磁性相における核スピン緩和時間が、他の二相(スピン3重項相、スピン1重項相)におけるそれと比べて、短いことが観測された。本研究で見出した線形分散を持つNG粒子は、メガヘルツ程度のラーモア周波数を持つ核スピン集団と相互作用し、傾角反強磁性相に特有の核スピン緩和現象を引き起こす可能性がある。これらの点に着目し、本年度は、傾角反強磁性相における核スピン集団の緩和現象の理論的研究を行った。核スピンと電子スピンの間にはs波型超微細構造相互作用が働く。そこで、NG粒子が面内成分のスピンに対する回転対称性の破れに伴うものであることを考慮し、電子スピンをNGボソン場で書き表すことによって、NG粒子(ボゾン)を熱浴とした、核スピン緩和現象を記述する模型の構築を行った。[参考文献][1]東北大学大学院理学研究科物理学専攻、Mohammad Hamzah Fauzi、Electron-Nuclear SpinDynamics in a GaAs Two Dimensional System、博士課程学位論文第5章(2013)。
2: おおむね順調に進展している
前年度の研究成果を踏まえて、今年度の研究では、傾角反強磁性相におけるNG粒子は、スピン回転対称性の破れに伴うものであるという、新たな知見を得ることができた。更に、このNG粒子の性質と、文献[1]で得られた、ν=2二層量子ホール系における核スピン緩和の実験を踏まえることで、傾角反強磁性相における核スピン緩和現象を記述する模型の構築を行うことができた。以上のことから最終年度の研究として、今年度の研究はおおむね順調に進展したと考えられる。
(抄録なし)
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Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 053I01 ページ: 1-33
10.1093/ptep/ptt025
Journal of Physics : Conference Series
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