研究課題/領域番号 |
12J09574
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
杉村 恵実子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 高温高圧実験 / 高圧氷 / アンモニア / X線回折測定 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究概要 |
本研究では高温高圧下における水一アンモニア系の融解相関係を決定し、得られた相図から、巨大氷惑星の磁場成因を明らかにすることを目的としている。本年度は主に高温高圧下における水一アンモニア系での融解実験を行い、12万気圧までの圧力におけるアンモニア氷の融解温度を決定した。高温高圧発生には外部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセル(外熱式DAC)を用いた。物質の融解を判定するためには(1)固体からのX線回折線の消滅、(2)液体からのX線散漫散乱の出現、(3)顕微鏡観察による組織変化、の3基準を用いた多角的な検証が必須である。そのために本年度はまず大型放射光施設SPring-8のビームラインにおいて、室温高圧下における水-アンモニア系の既存の状態図の追試実験を行い、それに基づいて入射X線のビーム径の調整、及び高温高圧下における外熱式DAC内試料の顕微鏡観察系の立ち上げを行うことで、高温高圧条件下にある物質のその場融解判定を可能とした。これらを外熱式DACと組み合わせた高温高圧融点測定システムを用い、12万気圧までの圧力条件における水-アンモニア系での融解実験を調べた。その結果、アンモニアを20wt%含む系において、12万気圧におけるリキダス温度は527℃であることが明らかとなった。一方、アンモニアを10wt%含む系においては12万気圧におけるリキダス温度は577℃であった。また、初晶相であるH_2O氷の体積を測定したところ、その体積は純粋なH_2Oよりも0.3%小さいことが分かった。このことは初晶相である氷が純粋なH_2Oでなく、微量ながらもアンモニア成分を含有している可能性を示す。以上の結果から、10wt%程度のアンモニアを含むと考えられている巨大氷惑星のマントル内の主要構成相はアンモニアを含有した氷(アンモニア氷)であることが示唆される。これらの結果については2012年12月にサンフランシスコで開催された国際学会American Geophysical Union Fall Meeting 2012にてポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した予定では当該年度では先行研究の追試実験として水-アンモニア系における室温高圧実験を主に行う予定であった。しかし申請者はこれを2か月で完遂し、その後、2年目以降に予定していた、より実践的な研究である高温高圧融解実験を行うに至った。以上により、最高評価と評価致します。
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今後の研究の推進方策 |
現在、高温高圧融解実験については限られたアンモニア組成(10wt%及び20wt%)と圧力(12万気圧まで)においてのみデータを取得している。巨大氷惑星内部の温度圧力における水-アンモニア系の融解相関係を明らかにするためには、より幅広い組成幅(0-50wt%)で、より高い圧力(100万気圧)における水-アンモニア系の融解相関係を明にする必要がある。問題点としては、組成が30mol%アンモニア組成以上の濃アンモニア水は市販されていないため、純水と液化アンモニアから調整する必要があるが、アンモニアは常温で非常に揮発しやすく、調整した組成を保つことが困難である。そのための対応策として(1)低温環境(マイナス50℃)における試料調整、(2)アンモニア雰囲気下における高圧発生装置内への試料密封、の2点を行う予定である。
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