研究課題/領域番号 |
12J09618
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐々野 浩太 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | 二酸化炭素 / パラジウム触媒 / 炭素-水素結合官能基化 / ヒドロカルボキシル化 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に記した単純アルケン類のカルボキシル化反応に関する検討の過程において新規な炭素・水素結合の直接カルポキシル化反応を見出だした。すなわち、2-ヒドロキシスチレン誘導体に対し、二酸化炭素雰囲気下、炭酸セシウムとともに触媒量の酢酸パラジウム(II)をジグリム中、100℃で作用させることで、アルケン部位の炭素-水素結合の直接カルボキシル化が進行し、対応するクマリン誘導体が収率良く得られることを見出だした。本反応は高い官能基許容性を有し、様々なα-置換2-ヒドロキシスチレンに対して適用可能である。また、申請者は本反応における反応中間体の単離にも成功しており、単結晶X線構造解析により炭素-パラジウム結合を有するメタラサイクル中間体の構造を明らかとした。 本反応はアルケニル炭素-水素結合の切断、続く二酸化炭素への求核付加を触媒的に実現した初めての例として極めて重要な成果である。加えて、本反応は従来のロジウム触媒を用いた炭素-水素結合直接カルボキシル化反応とは異なり、高反応性の還元剤を用いる必要がなく、より実用的な二酸化炭素固定化反応への展開が期待できる。 また、本反応をアルカン類に適用する事ができれば、本研究の最終目標である単純アルカン類と二酸化炭素を原料とした飽和カルボン酸の合成法へと展開できるものと考えられる。これは当初想定していた単純アルカンの連続的脱水素-ヒドロカルボキシル化反応に比べ、より直裁的な分子変換であり、アルカンの直接カルボキシル化反応開発の有望なアプローチであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度見出だした新規な炭素・水素結合の直接カルボキシル化反応は当初、想定したアルケン類のヒドロカルボキシル化反応とは異なるが、今後、単純炭化水素類への展開が期待できる。また上述の通り、アルカン類に適用することで、本研究の最終目標である単純アルカン類と二酸化炭素を原料とした飽和カルボン酸の合成法に対するアプローチとなると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初想定したアルケン類のヒドロカルポキシル化反応ならびアルカン類の連続的脱水素・ヒドロカルボキシル化反応に加えて、単純炭化水素の炭素一水素結合の直接的カルボキシル化反応の実現を目指す。上述の炭素・水素結合直接カルボキシル化反応を他の基質、特にアルカン類に適用するには、「炭素・水素結合の切断」ならびに「二酸化炭素への求核付加」のいずれもが困難となることが予想される。これについては配位子の徹底的なチューニングにより解決を図り、実用的な触媒的飽和カルボン酸合成法の確立を目指す。
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