研究概要 |
圧電体膜を用いて振動発電を行う際には、『無毒な圧電材料, 膜と基板を含むサンプル全体の高いフレキシビリティ』の二つが要求される。これらを満たすため、水熱合成法により(K, Na)NbO_3膜を金属箔や樹脂上へ作製することに着目している。そこで、本年度は以下の研究を試みた。 ・アニール効果調査 水熱合成法は溶液中で圧電材料を製膜するため、不純物としてOH⁻やH_20を含み、特性低下を引き起こす。そこで、単結晶基板上に作製された(K, Na)NbO_3膜を様々な温度でアニール処理することで、不純物とアニール処理が各特性に与える影響を調査した。これより、300℃近傍を境に二種類のアニール効果を観測した。また、それぞれのアニール効果によって改善する特性が異なることを明らかにした。特に、最も不純物の影響を受け、発電量を含む全ての特性低下を引き起こすリーク電流においては、300℃以下の低温アニールによって大幅に改善することが分かった。この結果を応用することで、耐熱性が低く、高温アニール不可能な樹脂上においても、高い絶縁性が実現でき、各特性の向上が可能であると期待している。 ・振動特性調査 これまで、水熱合成(K, Na)NbO_3膜による振動発電の報告は成されていない。そこで、金属箔上に製膜したサンプルを用いて振動特性を調査した。サンプルに応力を印加しても、割れや剥離は確認されず、小さな曲率半径を有していることが分かった。これより、基板種を広く用いられているSi等の単結晶から金属箔へ拡張することで、高いフレキシビリティの実現に成功した。また、加振させることで水熱合成(K, Na)NbO_3膜では初めて発電特性の観測に成功した。共振周波数は数百ヘルツオーダーと低く、環境振周波数に適していることも確認した。これより、金属箔上の水熱合成(K, Na)NbO_3膜は振動発電に適していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、金属箔上での水熱合成(K, Na)NbO_3膜の振動特性向上を目指す。25年度で得られた発電特性は他の報告値と比較して、100分の1程度低い。そこで、アニール処理, ポーリング処理, 組成依存について検討する。また、並行して樹脂上への製膜及び、振動特性の観測を試みる。樹脂上へは100℃程度の低温で製膜する必要があり、製膜に必要な反応エネルギーを十分に確保できない可能性がある。これには、膜と基板の間に導入するバッファー層種を検討することで、反応を促進させることが出来ると考えている。
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