研究概要 |
本研究の計画通り、2年目となる平成25年度では, 「生体内パスウェイ解析を目的とした, 統計モテルとシミコ. レーションモデルの融合」を達成する新たな時系列解析・多変量解析手法の理論構築と実装, 評価, 論文化までを行った. まず研究の概略であるが, 本研究は生体内パスウェイ解析の(i)統計モデルによるアプローチと(ii)シミュレーションモデルによるアプローチを統合することを目的としている, この為に, (a)生物学的知見を取り込んだ統計モデルを構築し, (b)その結果をより精緻な, しかし計算コストが大きいモデルに適用し修正・拡張を行い, (c)修正された結果を更に, 微分方程式で記述されるモデルに適用することで, 観測データに合致する大規模な生体内パスウェイを, 生物学的知見に準拠した形で構築する一連の解析スキーマの開発を行う. 以下、それぞれの実施内容について簡潔に説明する。 (a) : 線形状態空間モデルによって遺伝子間の制御構造を解析する手法の開発を行った. 既存の状態空間モデルはバイオロジカル・シミュレーションモデルを適切に表現出来るモデルになっていないという問題点があった為, この統計モデルを生物学に立脚し, かつシミュレーションモデルと同化し得る統計モデルへと改良した. また, 構造推定の新たな統計学的手法を開発した. (c) : 既に生物学実験によって提案され、文献化されているパスウェイ情報を基本に, 観測された生体内データに合致するようにパスウェイを修正する手法を提案した, この手法では微分方程式で記述される, 生物学的知見に合致したモデルを用い, この精緻なモデルを解析する方法論としては非線形時系列モデルであるparticle filterを用いた. (b) : (a)よりは精緻であり, (c)より遥かに多くの生体内分子を扱える統計モデルと制御構造の修正手法の開発を行った. 提案した手法を用いて, ある与えられた生体内パスウェイを, (c)より複雑でない非線形の統計モデルに基いて, 観測データに合致するように修正することが可能になった. 以上の(a)-(c)の研究成果は現在査読中である.
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