研究概要 |
スーパーコンピューター, データセンター等の産業用情報機器の処理速度の爆発的な伸びや並列度の拡大により, 大容量かつ低消費電力の光インターコネクト技術の開拓が急務になっている. 本研究では, 我が国発の独創的発光デバイスである面発光レーザ技術を基に, 現在の直接変調半導体レーザの高速化の限界を超える超高速面発光レーザを実現するための基盤技術開拓を目指した. 具体的なアプローチとしては, 面発光レーザと同一面内に集積された光の一部を結合・帰還させる新構造導波路を設計・製作して, 光の帰還により面発光レーザの直接変調動作の高速化を図り, 40Gbps級の直接変調技術の基盤確立を進め, 以下の成果を得た. 1)横方向結合共振器の構造としてくびれ酸化狭窄構造を提案し, レート方程式解析により, 結合共振器により小信号変調帯域が倍以上に拡大できることを示した. また実際にデバイス製作を行い, 小信号変調帯域として, 980nm帯面発光レーザとしては, 世界最速の29GHz以上の高速化を実現して, 大信号変調特性としては36Gbpsの変調に成功するとともに, その動作温度やバイアス電流に対する良好な安定性を実証した. 2)横方向結合共振器面発光レーザにおいて, 各共振器へ注入する電流波形の位相を反転した差動変調方式による高速化の手法を提案し, くびれ酸化狭窄構造を有する面発光レーザを用いて, 差動変調方式を導入し, 40Gbpsの大信号変調に成功した. 3)横方向結合共振器面発光レーザの一方の共振器に逆バイアス電圧を印可する変調器集積光源を製作し, 変調電圧200mV以下で消光比5dB以上の低電圧動作を実証するとともに, 25Gbpsまでの高速変調動作を実現し, 低消費電力動作と高速化の両立の可能性を示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
横方向結合共振器の構造として, 新規なくびれ酸化狭窄構造を提案し, 小信号変調帯域として, 980nm帯面発光レーザとしては, 世界最速の29GHz以上の高速化を実現するなど, 顕著な成果を達成した.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を基盤として, さらに次の方針で研究を推進する. 1)横方向結合共振器であるくびれ酸化狭窄構造の構造最適化をさらに進めて, 40Gbps以上の高速変調を実現するとともに, その高速化の限界性能を明らかにする. 2)差動変調方式の導入により, 複合共振器効果との協調により, 高速化の限界に挑戦するとともに, 低消費電力化の極限性能を明らかにする. 3)変調器集積光源におけるフォトキャリア効果などを明らかに, 40Gbps以上の高速化を進める.
|