研究概要 |
本研究ではセレンのような重原子を含むにもかかわらず強い蛍光を示す3-メチレン-2,3-ジヒドロカルコゲノフェン誘導体の特異な発光特性発現のメカニズムの解明とそれらを用いた発光素子の開発を目的とした。 発光メカニズム解明のためにまずセレンよりも高周期のテルルを含んだ3-メチレン2,3-ジヒドロテルロフェン誘導体を合成したが、蛍光性は硫黄やセレンと比べ著しく低下した。このことから第五周期の元素では重原子効果が強く影響することがわかった。 3-メチレン2,3-ジヒドロテルロフェン誘導体はほとんど蛍光を示さなかったが、その前駆体として合成した四員環テルラプラチナサイクルが室温、溶液状態では発光を示さなかったが、結晶状態においては室温でも強いリン光を示すことを見出した。硫黄、およびセレン類縁体のリン光性も確認し、カルコゲン元素の周期が大きいほど短波長で強く発光した。 類似錯体として五員環テルラプラチナサイクルも合成したところ、四員環錯体の場合と同様に室温、溶液状態では発光を示さないが、結晶状態ではより強いリン光を示した。得られた錯体については様々なリン配位子を用いて配位子交換反応を検討したところ、青から赤色までの多彩な発光を示す錯体が種々得られた。その中でも、室温、固体状態にもかかわらず、発光量子収率1.0をしめす非常に強いリン光錯体も得られた。室温、固体状態で強いリン光を示す化合物はあまり多くないため、得られた錯体は新しい発光材料として重要である。
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