研究課題/領域番号 |
12J09835
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研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
湯川 文彦 川村学園女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 行政制度 / 法制 / 明治前期 / 司法行政 / 教育行政 / 警察行政 |
研究概要 |
平成24年度は、明治前期の政府における法制改革と行政改革の動向とその関連を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。 法制改革については「明治新政府の「立法」」(『東京大学日本史学研究室紀要』第17号)において、各省の政策立案と正院(内閣)の法案審査、議事機関(地方官会議・地方民会)の活用によって新政府流「立法]のモデルが形成されたことを明らかにした。行政改革については、教育事務・警察事務・司法事務を対象にそれぞれ分析を行った。第一に「明治初期教育事務の成立」(『史学雑誌』第121編第6号)において、新史料を基に教育基本法令・教育令の成立過程を実証し、明治5年学制から教育令への移行に込められた文部省の政策意図と、正院・元老院の実質的な機能を分析し、「明治10年代における教育事務の再編」(教育史学会発表および『日本の教育史学』投稿・審査中)において、教育令の改正過程を明治10年代の政治状況との関連から明らかにした。第二に「明治初期における行政警察の形成」(『明治維新史研究』掲載予定)において、内務省の主管事務、行政警察の形成を府県事務との関連で明らかにした。第三に「明治初期における官民訴訟の形成と再編」(『日本歴史』掲載予定)において、明治初年の対官吏訴訟制度の形成・再編過程を通じて司法事務の法制上の役割の変化を明らかにした。 上記の論文化作業に並行して、長崎歴史文化博物館、山口県文書館、沖縄県立公文書館を訪ね、それぞれデジタルカメラによる史料撮影を行った。明治前期の地方行政に関する公文書・私文書を撮影対象とし、法制、教育行政、産業振興に関する史料を中心とした。 なお、2012年11月、東京大学大学院人文社会系研究科に学位請求論文「明治初期における行政事務の形成―官民共治の構想と展開―」を提出し、審査を経て2013年3月7日、博士(文学)の学位を授与された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」に掲げた三つの課題(1法制機関と行政機関の相互作用による行政制度整備、II近世・近代移行期における地方制度の整備、III教育制度改革の意図と実相)のうち、平成24年度計画ではIを中心としたが、結果としてIとIIIについて多角的に研究を進めることができた。地方史料の調査を行い、博士論文において一連の研究成果を整理・統合できたことは、平成25年度計画において一定の準備ができたものと捉えている。 以上のように、平成24年度計画を履行し、予定していた平成25年度計画の準備も滞りなく完了したので、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、前記の課題IIに本格的に着手する。これに伴い、平成24年度における課題I・IIIの研究成果との相互関係を明確にし、最終年度に向けた研究成果の整理・統合を進めていく必要がある。 課題IIについては、さらに地方史料調査を行うとともに、成果の取りまとめに際して、近年様々な視点から行われている移行期研究に対して行政制度成立過程との関連で対話していきたい。研究成果の整理・統合には平成24年度提出の博士論文をベースとしつつ、今後、新たな成果を踏まえた再構成に取り組むこととする。
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