研究課題/領域番号 |
12J09836
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 遼平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | メダカ / DNAメチル化 / 転写制御 |
研究概要 |
個々の細胞における発生関連遺伝子の発現状態を生涯にわたり正確に維持することは脊椎動物にとって組織の成長や機能維持のために不可欠であり、多くの発生関連遺伝子の発現異常はガン化の原因にもなることが知られている。本研究では、DNAやピストンのメチル化といったエピジェネティックなクロマチン修飾に着目することで、個々の遺伝子の発現状態を正常に維持するメカニズムの解明を目的としている。私はこれまでに、メダカの組織を用いたゲノムワイドな解析から、生涯にわたり発現している遺伝子近傍ではDNAのメチル化レベルが上昇していること、このDNAのメチル化には遺伝子発現を制御するピストン修飾パターンの変化が伴うことを示した。本年度の研究では、これまでに得られたゲノムワイドデータを詳細に解析することで、発生関連遺伝子周辺のDNA非メチル化領域の大きさと抑制型ピストン修飾レベルが相関することを見出した。また、巨大なDNA非メチル化領域は内部に発生において重要な機能を持つ転写因子を多く含んでおり、それらの遺伝子発現量が非常に強く抑制されているという結果も得た。さらに、メダカのデータを公開されているヒトES細胞のデータと比較することで、このような巨大DNA非メチル化領域が脊椎動物の種を超えて保存されていることを明らかにした。一方、メダカ変異体を用いた解析から、DNAメチル化レベルの変化はクロマチン状態に依存することも示した。以上から、細胞の個性を決めるような重要な遺伝子ではDNA非メチル化領域の大きさが調節されることで遺伝子発現状態が維持されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、ゲノムワイドデータの解析からDNAメチル化と長期的遺伝子発現の関係の普遍性を示すことができた。長期的遺伝子発現に対するDNAメチル化の作用機序についても現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
長期的遺伝子発現維持に対するDNAメチル化の作用機序を明らかにするために、DNAメチル化阻害実験を行う。すでにDNAメチル化を担う酵素が阻害されたトランスジェニックメダカを作成しており、その解析を行う。さらに、ゲノムワイドデータの解析を進めることでDNAメチル化の変化に寄与する候補因子の同定を行う。
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