昨年度は東京都で捕集されたヤマトクシヒゲカ由来から分離された、レオウイルス科オルビウイルス属のユーマティラウイルスの一種、Koyama hill virus (KHV)の解析を実施した。本年度は2012年度に分離に成功したマダニ由来ウイルスの解析を継続した。 兵庫県で捕集されたアカコッコマダニから分離された分節2本鎖RNAウイルスは、レオウイルス科オルビウイルス属のグレートアイランドウイルスの一種であると確認された。ウイルスの全ゲノムを決定し、さらに培養細胞における増殖性も調べた。解析の結果、本ウイルスはマダニと鳥類間で伝播が成立している可能性が高いことが示唆された。なお、国内におけるマダニからの本ウイルスの分離は初報告である。本ウイルスは宿主鳥類の渡り行動と節足動物媒介性病原体の分子疫学を調査する上で重要な指標になると考えられる。 さらに、キチマダニから分離された分節1本鎖RNAウイルスは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属の新規のアルボウイルスであることが確認された。また、マダニのウイルス保有状況を国内各地で調べ、新たに2種類の新規ウイルスを分離することができた。なお、新規の2種のウイルスの詳細解析は引き続き継続する予定である。 本研究において、渡り鳥などの保有宿主の長距離移動に伴う日本国内へのアルボウイルス侵入リスクを予測するための指標となりうる病原体を見出すことが出来た。しかし、各病原体の分布状況を把握するために十分な情報の蓄積には至っておらず、今後も継続した調査・研究の必要性が示唆された。
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