採用第2年度目にあたる本年度は、初年度に引き続き「選択の機会の平等」に関する脳機能イメージング実験のデータ解析をおこなった。初年度の解析では局所的な脳活動の増減のみを扱っていたが、本年度は離れた脳領域間の機能的結合(functional connectivity)を調べるためのpsycho-physiological interaction (PPI)という解析に取り組み、局所的な脳活動増減の結果をより補強する解析結果を得た。投稿した論文は2014年4月2日に「Journal of Neuroscience」誌に受理され、採用2年度目末までに「選択の機会の平等」に関する実験の結果を論文にまとめるという研究開始当初の目標をおおむね達成することができた。また本年度6月から米国カリフォルニア工科大学にて在外研究をおこない、Colin Camerer教授の指導のもと、経済学の理論を取り入れたより洗練されたデザインを用いて「機会の平等」の神経基盤を明らかにするための脳機能イメージング実験の準備を進めている。 また、上記の脳機能イメージング実験において、自己の「選択の自由」の度合いにどの程度価値を置くかの個人差が、「一般性自己効力感尺度」という心理学尺度の得点と相関することが見出された。これを受けて、心理学的特性の個人差と脳構造の関係を調べることができるvoxel-based morphometry (VBM)という手法を使用し、「一般性自己効力感」の脳構造基盤を健常大学生54名のデータをもとに解析した。その結果、「一般性自己効力感尺度」の得点の個人差が扁桃体や中前頭回の灰白質体積と相関するという知見が得られ、研究成果を第43回北米神経科学大会で発表した。
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