これまで、磁性微粒子と磁力を用いて筋芽細胞から人工筋組織を作製してきたが、この人工筋組織は生体内の筋肉組織と比べて発生する収縮力がきわめて小さいという問題点を有している。前年度に引き続き、この問題を改善するための手法として筋芽細胞の遺伝子工学的改変に取り組んできた。前年度までに人工筋組織の高機能化のために、IGF-1遺伝子またはBcl-2遺伝子を導入した筋芽細胞から作製した人工筋組織は、収縮特性が向上するなどの機能向上に成功している。そこで今年度は人工筋組織の更なる機能向上を目的に、研究を行った。これまでの結果から、IGF-1とBcl-2の相乗効果が得られる可能性があると考え、筋芽細胞へのIGF-1遺伝子とBcl-2遺伝子の共導入を試みた。また、筋芽細胞への遺伝子導入だけでなく、物理的な刺激として電気刺激培養と組み合わせることで人工筋組織の機能をより向上させることを試みた。その結果、遺伝子の共導入と電気刺激培養との組み合わせを行った人工筋組織は、遺伝子導入を行っていない人工筋組織と比較して約8倍、また電気刺激培養のみを行った人工筋組織と比較して約2倍の収縮力を得た。以上の結果から筋芽細胞への遺伝子共導入と電気刺激培養の組み合わせは人工筋組織の更なる高機能化に有用な手段であることが明らかになった。以上の結果は研究実施計画通りに進行した。また、学会発表を2件(国内学会、国際学会1件ずつ)行っており、研究成果の発表にも積極的に取り組んだ。
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