研究課題/領域番号 |
12J09916
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
藤倉 喜恵 名古屋工業大学, 未来材料創成工学専攻, 特別研究員DC2
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キーワード | アルミニウムシリケート / イモゴライト / ナノチューブ / ゲル / ハイドロゲル / レオロジー / 粘弾性 / 骨再生 |
研究概要 |
低結晶性アルミニウムシリケートの1種、イモゴライトナノチューブが持つ高い保水性を利用した、新規ゲル状骨形成促進剤の開発を目指し研究を行った。本研究の特色は、イモゴライトをゲル形成する母材として用いる点にある。そのためにはまず、イモゴライトからゲルが形成される条件の調査、及びゲルの特性評価について基礎的な知見を得ることが必要である。 得られるゲルの特性、粘弾性に影響を及ぼす因子としてイモゴライトのチューブ長、分散溶液のpHが考えられる。それぞれ、合成段階での加熱時間の調整、およびアルカリ(NaOHaq)添加により、種々のイモゴライト分散水溶液を用意した。各溶液に対し、塩析剤を加え、遠心分離することにより、水溶液中に分散したイモゴライトからハイドロゲルを得ることに成功した。これまで現象としてのみ報告されていたアルカリ環境下での凝集挙動を精査し、中性-アルカリ性(pH6-10)の範囲でハイドロゲルとして回収する方法を確立することができた。3段階にチューブ長を変えたサンプル(長・中・短)を用いてゲルを作製した場合、チューブ長が長いほど得られるゲルの収量が多かった。長いチューブ長のイモゴライト分散水溶液からは、最大で含水率99.9%のハイドロゲルが得られることが分かった。レオメーターを用いて各ゲルの硬さの指標として粘弾性を測定した場合、4日加熱のサンプル(中間のチューブ長)が最も硬いゲルであるという結果が得られた。 イモゴライトナノチューブが保持する液体成分として、汎用性ポリマーの一つ、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたゲルの作製を試みた。イモゴライト分散水溶液中に液体PEGを加え撹拌し、加熱(105℃)することで、沸点の差を利用してゲル中の液体成分を置換し、PEG中にイモゴライトナノチューブを分散させたゲルを得ることに成功した。このゲルは、離漿がほとんどみられず、ハンドリング性の高いものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イモゴライトのゲル化現象について、これまで報告のなかった中性pH付近におけるハイドロゲル回収方法を確立した。また、既存材料との組み合わせによる臨床応用例を見据え、新たにオルガノゲルの作製にも成功している。ゲルのハンドリング性について、計画段階では予想し得なかった問題点にも臨機応変に対処した結果であり、・期待以上の材料が得られたことが理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床応用の方法として、既存の骨充填材料ヘインジェクタビリティを付与する材料としての使用を考えている。まずは、ハイドロゲルでみられたハンドリング性に関する問題点(離水現象や安定性の不足)を解決するため、ポリエチレングリコール(PEG)を保持液体としたゲルの作製、評価を行う。既存の骨充膜材料の代表例としてBioglass^〓を取り上げ、その粉末とゲルとを組み合わせたペーストの作製を予定している。得られるペーストのpHの経時変化やインジェクタビリティの評価としてレオメーターによる粘弾性測定を予定している。
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