研究課題/領域番号 |
12J09955
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北野 健太 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 分子配向 / テラヘルツ |
研究概要 |
研究員は、高強度テラヘルツパルス用いて分子を配向させ、それらの分子に対して、アト秒軟X線パルスという最先端光源を適用することによって、分子内部で起こる電子ダイナミクスを実空間、実時間で観測するための手法を開拓することを目的として研究を行なっている。以下にその成果を報告する。 平成25年度は、平成24年度に独自に制作したテラヘルツ発生ユニットを内包したイメージング装置を用いて、分子配向実験を行なった。その結果、ジェット冷却された極性分子のテラヘルツパルスによる分子配向、およびそれらの直接観測に世界に先駆けて成功し、得られた実験データから配向度を定量的に評価する手法を確立した。実験データとシュレディンガー方程式の数値解によるシミュレーション結果との比較を行った結果、本手法により、熱分布によるインコヒーレントな効果を含めて、回転励起プロセスを極めて正確に再現することができることが分かった。以上の結果は、平成25年度の研究実施計画で予定されていた内容であり、計画通り順調に成果を上げることができた。次に、さらに精度の高い回転制御の実現を念頭において、二つのテラヘルツパルスを用いた分子配向実験を行なった。その結果、二つのテラヘルツパルスを用いた場合、一つのテラヘルツパルスによる回転励起では得ることができない、極めて特徴的な回転制御状態を実現することに成功した。特に熱分布した分子集団に対して、ある回転エネルギー状態に分布している分子のみを選択的に回転励起することができることが分かった。この結果は、テラヘルツパルスを用いた同位体分離などへ応用できると考えられ、"複数のテラヘルツパルスを用いた回転運動のコヒーレントコントロール"という新しい研究の方向性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子配向実験に関して、当初の計画通り、単一のテラヘルツパルスを用いた実験を行い、期待通りの成果を上げることができた。さらに、二つのテラヘルツパルスによる実験を試みた結果、極めて興味深い結果が得られた。同結果は、複数のテラヘルツパルスを用いることにより、精度の高い分子配向をできることを裏付ける結果であり、新しい展開が開かれた。また、研究員の研究室では、分子配向実験と並行して、アト秒分子イメージング実験に必要な光源開発が行われている。これに関しても、水の窓と呼ばれる極めて重要な軟X線領域で光の電場波形(キャリア・エンベロープ位相)に追従したコヒーレント軟X線発生およびその観測に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、第一に分子配向度の改善を行う。そのためには、テラヘルツパルスをより単焦点で集光させることが必要であり、光学部品の配置の改良を行う。次に、近赤外シングルサイクルアト秒パルス光源のさらなる高強度化を実現させる。さらにそれらを組み合わせることにより、最終的な目的であるアト秒分子イメージング実験へと展開し、電子のダイナミクスに関する研究を行う。
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