研究課題/領域番号 |
12J09979
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
岩崎 裕貴 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | インフルエンザウイルス / バイオインフォマティクス / BLSOM / 連続塩基組成 / パンデミック / ゲノム進化 / 変化予測 / 人獣共通感染症 |
研究概要 |
インフルエンザウイルスの宿主への適応に関連したメカニズムの解明を目的とした研究を行った。約12,000株のA型及びB型のインフルエンザウイルスゲノムを対象とした連続塩基組成に基づいた一括学習型自己組織化マップ (BLSOM)解析を行った。 以前に行った解析で、ヒトで流行しているインフルエンザウイルス株はトリで流行している株と比較して、A及びUに富んだ連続塩基を好む傾向が見られ、1塩基組成の影響が見られていた。インフルエンザウイルスがヒト宿主に適応するために重要な役割を果たす連続塩基モチーフを探すために、インフルエンザウイルスの連続塩基組成を1塩基組成で補正してBLSOM解析を行った。結果として宿主ごとの明確な分離が見られた。また、ヒトを宿主として流行しているA型及びB型株で共通して好まれている連続塩基モチーフが見られた。宿主への適応に重要であると考えられる。 インフルエンザウイルスRNAと宿主由来の因子間の相互作用にも注目した。インフルエンザウイルスRNAが宿主由来の因子、例えばタンパク質と相互作用する場合、ウイルスRNA配列中には、宿主と同じタンパク質認識配列(例えば転写因子結合配列)が存在すると考えられる。インフルエンザウイルスRNAと宿主由来RNAが共通して保存している配列モチーフを探索するために、インフルエンザウイルスRNAと、インフルエンザウイルスの主な宿主であるヒト由来のRNAを対象にBLSOM解析を行った。結果として、宿主由来RNAと共通した配列モチーフを保持しているインフルエンザウイルス株が見られた。共通した配列モチーフを含む領域のRNAの2次構造予測を行ったところ、いくつかの領域で、宿主と共通している配列モチーフがループ領域中に存在していることが見られた。 これらの成果はいくつかの国内外の学会にて報告済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初から予定していたB型のインフルエンザウイルス株を加えた解析、連続塩基組成から1塩基組成の影響を除いた解析の成果は、複数の国内外の学会にて報告済みであり、その1部を論文として投稿中である。 また、ウイルスRNAと宿主由来因子の相互作用を調べる解析では、インフルエンザウイルスRNA配列中に、宿主由来RNAと共通した配列モチーフを保持している株の存在が見られた。宿主由来因子との相互作用が示唆された。これらの成果は複数の国内外の学会で報告済みである。
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今後の研究の推進方策 |
2013年3月に中国でヒトへの感染が報告されたH7N9株の特徴を詳しく調べる。1997年からヒトへの散発的な感染が報告されているH5N1株とともに、これらのトリ流行株がヒトを宿主として感染するために重要な要素を調べる。 ヒト由来株と宿主環境の関連について調べる。インフルエンザウイルスは、自身の増殖の際には宿主由来の多くの因子を利用する。これまでの解析で、ヒトから分離された季節性のA型のインフルエンザウイルスの変化の方向性は、ある程度共通しており、B型株にも同様の傾向が見られている。これらの変化の方向性と宿主環境の関連を調べる。インフルエンザウイルスは、自身のゲノムの複製及び転写の際に少なくとも、宿主由来の塩基、tRNAを利用するので、宿主ゲノムの連続塩基組成、及びコドンの使用頻度との相関を調べる。
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