研究課題/領域番号 |
12J10013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 史郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 地域生産システム / 仮設住宅 / 岩手県 / 地域の建設事業者 / 東日本大震災 / 事例調査 |
研究概要 |
本研究の目的は、東日本大震災後に行われた応急的な住宅供給を事例として、地域の住宅生産システムがその供給活動にどのように貢献したかを明らかにし、さらに地域の持続的な復興にどのように貢献できるかを検討した上で、より効果的な再建・供給プロセスの構築にむけた手法を提案することを目的とする。 本年度は(1)地域の建設事業者による応急仮設住宅の統計的把握、(2)地域の事業者による建設プロセスの実態把握、を行った。 (1)では、全国で約53,000戸供給された応急仮設住宅について、その建設の担い手である3種の建設主体(地域の建設事業者(17%)、リースメーカー(55%)、大手住宅メーカー(28%))別に供給の傾向を把握した。具体的には、岩手県から提供された全320団地の統計データ及び各事業者による設計図書・仕様書にもとづき、地域の建設事業者の傾向を(1)事業者の属性、(2)供給の規模、(3)仕様、(4)工期の4点からプレハブメーカーとの比較を通じて明らかにし、その課題を指摘した。 また(2)では、計6回の岩手県での現地調査を通じて、応急仮設住宅の建設に関わった地域の建設事業者12社、大手メーカー4社、木材関連業者5社への聞取り調査を実施し、建設プロセスの実態を(1)設計、(2)資材の調達、(3)職人の手配、(4)施工の4点から明らかにした。その結果、地域の建設事業者による供給事例では、合板・断熱材等の資材の仕入れが難航したが、有力な商社など既存取引ルートの有効性も示された。一方で12社中8社は職人が不足し、工期の遅れに影響した事例も存在した。 このように、本研究は地元工務店などこれまで応急仮設住宅の建設に参画しなかった地域の建設事業者に着目し、その建設の実態を明らかにし得た点で大きな意義がある。また明らかにされた地域の建設事業者を活用することの課題と有効性は今後の災害後の住宅供給システムの構築に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査において国土技術政策総合研究所の協力を得られたため、行政機関や事業者への聞取り調査を実施しやすくなったことが、主な要因としてあげられる。また、数社の事業者とは常に連絡を取り、詳細な資料や他の事業者への紹介等調査に対して非常に協力的であったことも要因としてある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は応急仮設住宅の供給に関する実態調査を行なってきた。来年度は、それらの建設プロセスに見られた事業体制が通常の事業体制とどのような違いがあったのかを、数社を事例としてより詳細に調査していく予定である。 また、岩手県の通常の生産システムを様々な側面から考察し、それらが応急仮設住宅の建設にみられた緊急の生産体制とどのような関係にあったのかを明らかにした上で、今後の災害後の住宅供給体制に地域の事業者を活用する検討事項を含めた基礎的資料を提示することを目指す。
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