研究課題/領域番号 |
12J10021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大薮 海 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 室町幕府 / 守護 / 知行主 / 地域権力 / 伊勢国 / 北畠氏 / 大和国 / 興福寺 |
研究概要 |
本年度は、前年度の成果をふまえ、口頭報告や著書の出版を行った。 前年度は、主に大和国と伊勢国を中心として、地域権力が、室町幕府から分郡守護に補任されていないにもかかわらず、守護とともに幕府の地域支配を担う存在であったことを明らかにした。本年度は、研究対象を大和国・伊勢国から畿内近国にまで拡大させ、畿内近国で分郡守護とみなされてきた地域権力について前年度と同様に検討を行い、さらに分郡守護そのものの存在の実否にまで踏み込んで研究を行った。そしてその成果を、学会報告と論文という形で公表した。 その報告・論文では、これまで論じてきたことを伊勢国の事例を中心にあらためて強調したうえで、他国の分郡守護とされる事例を再検討することにより、それが伊勢国限定の特殊事情ではなかったことを論じた。さらに、分郡守護は室町幕府の制度上の職掌ではなく、研究者が創り上げた概念であることもあわせて述べた。また、守護に一元化されないそのような支配システムが生み出された背景として、南北朝内乱により各地で地域権力化した勢力を、幕府がそのまま認める形で自らの支配領域を拡大していったこと、そのような地域権力を支持する京都の貴族・寺社や地域の人々が存在したことなどを指摘した。 そして、これまでの研究成果と、如上の学会報告および論文の内容を盛り込み、新稿も加えて著書の出版を行った。同書では、北畠氏や興福寺などを例として、室町幕府の地域支配は守護に一元化されるものではなく、守護と地域権力の協力関係の下に実現していたと論じ、そのような支配体制を「室町幕府―守護・知行主体制」と呼称することを提唱した。なお、同書の出版にあたっては、平成25年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開促進費)の助成を受けた。 また、史料の現地調査を、三重県教育委員会(津市)や松阪市立図書館郷土資料室(松阪市)などで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果を、歴史学研究会大会という、学界において影響力のある場において発表することができ、さらには一書にまとめて自らの主張を世に問うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究報告や著書で推測にとどまってしまった部分が大きい、南北朝期の様相について研究を進めることで、理論をより完成させたものにしていきたいと考えている。
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