研究課題/領域番号 |
12J10038
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丁 智恵 東京大学, 大学院・情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 朝鮮:韓国 / 映像 / アーカイブ / 植民地 / 記憶 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本植民地下にあった朝鮮半島の歴史の記憶を、埋もれていた映像資料の中から再検討することである。これらの映像資料は、当事者の手を離れ、各時代の権力者、支配者などに収集され、保管され、その記憶は再構築されてきた。また、植民地解放後も東西冷戦となった朝鮮半島の映像の保管や利用は、冷戦によるイデオロギー対立などが大きく影響しており、冷戦が終焉した90年代から2000年代にかけてやっと情報公開や機密解除などが進んでいる状況である。本研究では、これまで闇に埋もれてきた植民地朝鮮に関連する映像資料のアーカイブ状況の実態を調査し、リスト化、収集などを行なうと同時に、アーカイブと研究のネットワークを形成することを試みる。この作業によって、これまで検証されることのなかった植民地の被抑圧者たちの歴史と記憶がどのように人びとに伝えられてきたのか、あるいは消え去ってきたのかという、システムの構造自体の問題にも焦点を当てる。 そのためにまず、国内外の先行研究をまとめ、日本国内においては、東京国立美術館フィルムセンター、記録映画保存センター、NHKアーカイブス、放送ライブラリー、川崎市市民ミュージアムなどに所蔵されている関連資料を実態調査し、リスト化し、可能な限り閲覧あるいは収集を行なった。さらに、韓国においては、韓国映像資料院などに所蔵されている資料なども調査を行ない、また米国においては、ワシントンD.C.の国立公文書館、議会図書館、マサチューセッツ州ハーバード大学のフィルムセンターなどで関連映像資料の調査を行い、所定の手続きを行なった上で複写・収集作業を行なうことができた。各機関においては、アーキビストや関連研究者にもヒアリングやインタビュー調査を行なうことができた。 また、日本マス・コミュニケーション学会の査読論文掲載や日本社会学会での口頭発表を通じて、このテーマに関連する重要な意見や助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画の重要な柱であった日本・韓国の国内の映像資料収集は各方面の研究協力などがあり、実際にアーカイブへ訪問しまたインタビュー等も行なうことが出来、順調に進行している。また、米国の国立公文書館や議会図書館などへのフィールドワークでも、関連研究者などの協力があり情報収集なども順調に進み、予想以上の収穫があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き映像資料収集とインタビュー調査を中心とした国内外のフィールドワークを進める。国内外のアーカイブにおいては、対象としている映像資料がかなり昔のものであるためか、当初予想していたよりもデジタルアーカイブ化やデータベース化が進んでいなかった。そのため、紙媒体の参照カードで検索したり、フィルムを映写機にかけて閲覧するような場合が多いために、閲覧や収集自体に時間と資金が予想よりも多くかかった。ここでは、当初の研究の目的を果たすべく、アーカイブのシステムについて事前に綿密に調査し、時間面、費用面での対策を練った上で、閲覧や収集を推進していく予定である。
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