本研究は、日本植民地下にあった朝鮮半島の歴史の記憶を埋もれていた映像資料の中から再検討することである。しかし、それらの映像は、各時代の権力者・支配者の立場から収集され、保管され、再構築されてきた。ここでは、関連先行研究を整理し、それを乗り越えるべく問題意識を明確に持ち理論的展開を進めると同時に、これまでほとんど学術利用されないままに世界各地に埋もれている植民地朝鮮に関する映像資料を収集することを試みる。アーカイブと研究のネットワークを形成しながら、これまで検証されることのなかった植民地における被抑圧者たちの歴史と記憶について考察することを目指すものである。今年度は、オーストラリアでのフィールドワークや、日本国内の各地における調査を実施した。オーストラリアの戦争記念館、国立フィルム・音響アーカイブなどにおいては、日本や韓国では見ることができない、植民地解放直後や朝鮮戦争中にオーストラリア軍が朝鮮半島で撮影した映像などが所蔵されており、歴史を再検討する上で非常に重要な記録としての映像資料が多数発見された。これらの資料は研究利用が可能となっているので、規定の手続きの上、複写し収集した。さらに、関連資料について詳しい研究者などへのインタビュー調査も行なうことができた。オーストラリア国立大学においては、テッサ・モリス-スズキ教授の協力により、関連研究者たちとの連携や協力が可能となり、アジア・環太平洋規模での研究ネットワークを形成することができ、研究にダイナミズムを与えてくれた。平成25年6月には日本マス・コミュニケーション学会において、口頭発表を行い、また平成25年7月にはオーストラリア日本学会などで発表を行い、国際的な学術ネットワークが構築されつつある状況である。
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