研究課題/領域番号 |
12J10102
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
田中 あゆみ (小田 あゆみ) 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 窒素飽和 / 窒素安定同位体比 / 無機態窒素 |
研究概要 |
本提案課題「窒素負荷に伴う樹木の窒素利用メカニズムの解明と窒素飽和進行地域の広域予測」では近年問題となっている森林生態系への窒素過剰供給の影響を広域で明らかにするため、窒素供給量の異なる林分において土壌中の無機態窒素(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)と植物の窒素安定同位体比をそれぞれ分析し、窒素負荷により同位体比や成長量が著しく変化する種を窒素飽和の指標種として抽出し、これまで継続調査されてきた毎木調査データと成長解析から窒素負荷が森林動態に与える影響を広域で評価することを目的とする。研究課題である窒素負荷に伴う樹木の窒素利用メカニズムの解明を行うため、本年度は昨年度に引き続き窒素循環量の異なる様々な地域から土壌及び植物のサンプルを採取し、無機態窒素を抽出した後、硝酸態・アンモニア態窒素それぞれの濃度とδ^<15>N値を決定する作業を行った。植物体の窒素同位体分析は森林総合研究所が所有する質量分析計で行うが、土壌中の無機態窒素の分析には東京農工大学をはじめとする他大学が所有する機器を用いる必要があるが、機器トラブル等により同位体比の決定が遅れたため、植物体の窒素安定同位体比から生育状況の異なる森林における樹木の窒素利用の違いに関する研究を開始し、厳しい窒素制限下で植物体が通常は利用することの少ないアミノ酸や溶存有機態の窒素を利用していることを明らかにした。今後は、土壌pHなどの環境要因と植物葉の炭素安定同位体比や窒素濃度などの生理特性に関する調査も併せて行い、当該課題の目標である窒素負荷による植物体の窒素利用様式の解明を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は出産・育児に関する中断期間をいただいたこと、また、研究の遂行に必要な土壌中の無機態窒素の濃度・安定同位体比の精密分析に用いる機器が不調であったことなどから当該課題の進行は遅れ気味であるが、それ以外の研究活動は順調に進展し、学会発表や論文投稿などの成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、窒素負荷に伴う樹木の窒素利用メカニズムの解明を行うために、大気からの窒素降下量の違いが明らかになっている森林総合研究所の共同試験地において、植物体及び土壌の窒素同位体比分析から得られた両者の窒素同位対比と比較することで、窒素負荷による植物体の窒素吸収の変化を解析する予定である。また、その結果は順次、国内外の学会や学術雑誌等に発表する。
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