研究概要 |
【研究目的】 本研究は,時間知覚に関する脳の情報処理の最適化が,ヒトの中枢神経系において,どのような神経機序によって実現されているのかを解明していくことを目的とし研究を遂行してきた.平成24年度(初年度)は,心理物理学的手法とfMRI(機能的磁気共鳴装置)を連携させ,時間判断課題に関連した脳活動部位の同定を行ってきた. 【研究実施状況】 被験者に様々な時間間隔(SOA:Stimulus Onset Asynchrony,-300,-240,-180,-120,-60,0,+60,+120,+180,+240,+300ms[-は視覚先,+は聴覚先])で,視覚刺激と聴覚刺激を提示し,両刺激のどちらが先に刺激されたのか判断する時間順序判断(TOJ:Temporal Order Judgment)と,両刺激が同時に刺激されたのかを判断する同時判断(SJ:Simultaneity Judgment)の2種類の時間判断課題をfMRI装置の中で行ってもらい,各課題遂行中の脳活動の計測を行った. その結果,TOJで脳活動が観察された部位は,左島皮質(Brodmann Area:BA13),左右下頭頂小葉(BA40)右下前頭回(BA45),右中前頭回(BA9)であった.また,SJで活動が観察された部位は,右島皮質(BA13),左楔部(BA18),右帯状皮質(BA32),左前障であった. 両課題で活動がみられた島皮質は,先行研究において時間知覚に関わる事が知られている.また,TOJで活動がみられた部位(下・中前頭回と下頭頂小葉)は空間のコーディネーションに関わる事が知られている.以上のことから,多感覚の時間知覚において,脳の時間情報処理の神経機序に島皮質や空間的表象が関わっている可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,活動が観察された脳部位について,先行研究で知られている脳部位と一致するかどうかの確認を行うとともに,各脳部位において機能的役割や時間知覚との関連性,領域間の相互作用などについても調べていく.また,脳機能測定方法としてEEG(脳波)を用いた実験も行い,時間知覚における脳情報処理過程に関して,時空間的に神経機序を同定する.
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