研究課題/領域番号 |
12J10123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
役重 みゆき 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 細石刃石器群 / 北海道 / 後期旧石器時代前半期 / 石器石材 / 蘭越型細石刃石器群 / 環日本海北部地域 / 最終氷期最寒冷期 / 頁岩 |
研究概要 |
(1)北海道、本州の石器群対比を目的とした資料実見調査 5月24~31日の間、北海道における後期旧石器時代遺跡出土資料の整理作業を行った。細石刃石器群期の前半段階と後半段階の差異を検討するための重要な作業であり、後半段階の遺跡の性格について理解が得られた。8月8日から8月24日までの間、北海道において研究対象とする遺跡の出土資料実見調査を行い、既存の報告にない新たなデータ(石器の加工部位と素材との関係)を収集した。このデータは、これまで無関係と考えられてきた遺跡間の時期的・集団的同一性を示唆する重要な根拠となるものである。8月31日から9月10日までの間、研究対象とする時期の遺跡の発掘調査に参加し、データの収集に努めた。 (2)北海道の石器群と海外資料との対比を目的とした資料実見調査 7月5日~14日には、ロシアのクラスノヤルスク教育大学他で開催された第5回アジア旧石器学会に参加し、研究対象資料の実見と海外研究者との意見交換を行った。また、1月21日~2月4日、ロシアのチタ州、ノヴォシビリスク州において遺跡出土資料の実見調査を行った。北海道の細石刃石器群と類似点と相違点を多角的に確認できた結果、北海道細石刃石器群の成立過程を説明する根拠となるデータが得られた。 (3)非黒曜石石材の原産地調査 5月28日、北見地域で石材産地調査を行い、河川において良好な石材サンプルを採集した。8月11~14日、十勝地域で石材産地調査を行った。得られた石材サンプルで石器製作実験を行って検討した結果、これまで石器石材に利用可能な頁岩の分布が知られていなかった地域でその存在を確認でき、大きな成果が得られた。11月、北見地域で石材産地調査を行い、これまで確認されていなかった良質な珪質頁岩が採集された。北海道の非黒曜石石材の産地を広く確認した結果、遺跡で利用される頁岩の採集可能候補地の範囲が狭まり、産地同定の可能性が増した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非黒曜石石材の原産地調査については、綿密な事前調査と長時間の集中的な調査の結果、当初の計画以上の成果が得られている。北海道資料と海外資料との比較も、現地へ実際に行って大量の資料を実見できたことから、計画通り順調に進んでいる。北海道の資料と本州以南の資料との対比については、対象資料が後半な地域に及ぶことや、本時期に北海道を訪問する予定が多かったことから、むしろ平成24年度に北海道での調査を集約的に行い、平成25年度より本格的な調査を開始することとした。そのため、この研究目的の達成度はやや遅れていると言えるが、全体的な研究目的においては北海道において計画以上の進展がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度で研究課題を遂行し、目的を達成しなければならないことから、前項で述べた本州以南の地域との資料対比を重点的に行う必要がある。移動の効率を考え予定を組むことと、研究課題にとって重要な調査の優先順位づけが必要となる。それと同時に、平成24年度に行った調査についてまとめ、論文発表を行い、多くの研究者との意見交換を行うことで研究内容の精練を図る。
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