研究課題/領域番号 |
12J10126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松下 雄一郎 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 炭化ケイ素(SiC) / バンドギャップ / 有効質量 |
研究概要 |
半導体電子状態の完全解明。 近年、次世代パワーデバイス半導体として注目を集めます炭化ケイ素(SiC)は従来の基礎半導体理論では説明しきれない多くの現象が実験によって明らかになってきており、デバイス開発の基本指針や解析が極めて困難な状況に陥っている。本研究では、密度汎関数理論に基づいた理論計算により、その微視的メカニズムが伝導体下端の電子状態の異常性に起因することを明らかにした。その異常性とは、通常考えられてきたような原子近傍を広がった電子状態ではなく、内包空間内を浮遊(Float)した、ほとんど自由な電子状態(NFE ; Nearly Free Electron)であることを見いだした。この特異な電子状態を考慮することにより、これまで長年の謎とされてきた物理量の振る舞いを自然な形で説明することができるようになり、デバイス設計における指針や解析を初めて可能とするその土台を作ることができた。さらにはナノ内包空間を制御することにより低次元電子ガスを3次元結晶中に作り出せることを見いだした。多形制御というナノ構造体の制御により『材料潜在能力の極限発言』という可能性を示すことが出来、次のブレークスルーにつながる多くの研究成果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、予想さえしていなかった研究の発展を見せたため。今後の半導体教科書に記載されるべき研究成果であり、次のブレークスルーにつながる多くの研究成果を得ることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
SiC有効質量異方性の微視的メカニズムの完全解明。今回、有効質量異方性のメカニズムとして、波動関数の低次元電子ガス化が効いていることを明らかにした。しかし、それだけでは説明出来ない異方性メカニズムが存在することも同時に明らかとなった。有効質量微視的メカニズムの完全の解明は半導体デバイス開発にとって喫緊の問題である。問題解決のためには今後、多形と有効質量異方性の関係解明のために網羅的な計算を行う必要がある。
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