研究課題/領域番号 |
12J10169
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北嶋 直弥 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | インフレーション / 超対称性 / アクシオン / 原始ブラックホール / 暗黒物質 |
研究概要 |
平成24年度における私の研究として、主に超対称性アクシオン模型に基づく宇宙論シナリオを構築した。特に宇宙初期に起こったとされるインフレーションの起源の解明、現在の観測によってその存在が示唆されている暗黒物質の正体、さらに銀河中心にある超大質量ブラックホールの起源の解明といった宇宙論的問題を解決することに取り組んだ。第1に、超対称性アクシオン模型に基づくカーバトン模型における原始ブラックホールの生成に関する研究を行った。その結果として、宇宙初期にブラックホールが大量に生成され、現在の暗黒物質を原始ブラックホールで説明できること、さらに超大質量ブラックホールの種となりうる原始ブラックホールが作られることを示した。次に、超対称性アクシオン模型をスムーズハイブリッドインフレーション模型に応用する研究を行った。特に、インフレーション後のダイナミクスを詳細に解析し、うまくいくシナリオが作れるか、暗黒物質の存在が説明できるかなどを議論した。その結果,インフレーション後の再加熱が自然に実現することを示し、暗黒物質がウィーノという粒子で説明できることを示した。この研究は、素粒子論的に有力な超対称性アクシオン模型の枠組みのみでインフレーションを実現し、現在の暗黒物質の存在量を説明できることを意味しており、大変意義深い研究であると言える。さらに私は、超対称性ハイブリッドインフレーション模型に関する研究を行った。最近のLHC実験の結果から、グラビティーノ質量は極めて重いということが示唆されているが、従来の超対称性ハイブリッドインフレーション模型は重いグラビティーノ質量と相性が非常に悪いということが知られている。そこで私はこの模型を重いグラビティーノ質量が実現するよう改良した。故に本研究で構築した模型は超対称性に基づくインフレーション模型の中でも有力なものであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画はスアクシオンのダイナミクスを解析、超対称性アクシオン模型のスムーズハイブリッドインフレーション模型への応用また、原始ブラックホールの形成に関する研究であったが、スアクシオンの研究は平成24年度以前に終えることができ、スムーズハイブリッドインフレーション、原始ブラックホールに関する研究も早々に仕上げたため、新たに超対称性ハイブリッドインフレーションに関する研究に着手し、仕上げることができた。故に私の研究は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の方策について私は超対称性アクシオン模型に基づくカーバトン模型において重力波が生成されるかどうかに関する研究を計画している。特にこの模型で生成される重力波が将来の観測器によって検出されうるかどうかなどを議論する。また、アクシオン模型ではしばしば宇宙ひもと呼ばれる位相欠陥が宇宙初期に生成されるが、その宇宙ひもによって引き起こされる密度ゆらぎに関する研究を計画している。特に宇宙ひも起源の密度ゆらぎが21cm線の観測によって検出されるかどうかの議論を行う。
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