研究概要 |
平成25年度における私の研究として、カーバトン模型という一つの初期宇宙模型に着目し、この模型を将来の重力波観測によって検出する可能性などを議論した。 本研究ではインフレーション中にインフラトンに加えて「カーバトン」というスカラー場が存在するシナリオに着目した。このような状況は超重力理論の枠組みにおいて自然と実現され、特に質量がインフレーション中のハッブルスケールと同じくらいであるようなカーバトンが予言されることが多々ある。私はこのようなカーバトンにおいて曲率ゆらぎのパワースペクトルが小スケールで大きくなるという特徴に着目し、インフレーション後にスカラーゆらぎの2次の効果から重力波が生成されるという先行研究を応用して、このシナリオで予言される重力波が将来の重力波観測によって検出されうるかどうかを議論した。特に具体的なカーバトン模型として2次のポテンシャルをもつシンプルな模型と超対称性アクシオン模型に基づく模型において計算を行った。結果として、LISA, DECIGOなどの将来の直接検出実験や大型電波望遠鏡SKAによるパルサータイミング実験においてこのシナリオの痕跡を見ることが出来ることを示した。宇宙背景放射の観測では実証することの難しい初期宇宙模型を重力波観測で捉えるという点が本研究の特徴であり、非常に意義深いと言える。特に興味深いのは、この模型において原始ブラックホールが形成され、これによって銀河中心の超大質量ブラックホールを説明出来るようなパラメターを選んだときに、将来の重力波観測による検出が予言されるということである。
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