研究課題/領域番号 |
12J10183
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
会田 剛史 東京大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 社会関係資本 / 経済実験 / 灌漑用水管理 / 空間計量経済学 |
研究概要 |
本年度は進行中であった論文の大幅な改定と、新規論文執筆に向けた分析の準備を行った。前者の論文は、スリランカ南部農村地域の灌漑用水管理のデータを用い、上流・下流という地理的関係性に起因する灌漑用水アクセスの非対称性の問題を、社会関係資本の存在がいかに解決しているかを検証したものである。既存研究は主に家計調査データ又は実験データのいずれか一方のみを分析したものであり、そのために分析結果の内的・外的妥当性の点で改善すべき問題が残っていた。この論文は両者のデータを組み合わせ、経済実験で計測した社会関係資本が実際の灌漑用水配分に与える影響を検証することにより、既存研究で残されていた問題の解決を図ったものである。本年度は実証結果の頑健性を示すための追加的分析を加えて、論文の大幅な改訂を行った。この成果については、複数の国内・国際学会やセミナーにて発表を行い、高い評価を得た。 後者の新規論文に関しては、地理的・社会的距離の効果を明示的に取り入れた上で実際の経済データを分析するために、空間計量経済学的分析手法の修得に努めた。このような手法を用いることにより、地理的・社会的近接性のある人々の経済行動が自分自身の経済行動に与える影響を検証することが可能となる。また、発展途上国における社会的紐帯に関する研究について、社会学や文化人類学などの分野も含め広く文献を渉猟することにより、狭義の経済学の枠にとどまらない問題意識の発見に努めた。さらに、スリランカ南部農村地域においてフィールドワークを実施し、次年度に実施する本調査のための現地視察および質問票の作成等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部については、国内および国際学会にて発表を行い、高い評価を得た。24年度に実施を予定していた事前調査としてのフィールドワークは、受け入れ側の事情により25年度に実施した。しかし、続けて25年度に予定していた本調査を実施することにより、効率的なデータ収集が可能になり、研究の遅れは十分に解消された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の予備調査の結果を踏まえ、次年度ではフィールドワークを実施して、現地にてデータ収集を行う。また、今年度に修得した分析手法を用いて研究・論文執筆を行い、その成果を学会等で発表することを目指す。
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