研究課題
(110)面方位SrVO3の金属量子井戸状態SrVO3(001)面で明らかになった軌道選択的な量子化の制御を目的として、SrTiO3(110)基板上にSrVO3薄膜を堆積し、(110)面方位のSrVO3金属量子井戸構造の作製を試みた。薄膜作製条件最適化の結果、基板温度650℃、酸素導入無し、レーザーパワー35mJでステップ&テラス構造を有する高品質なSrVO3(110)面の薄膜を作製することができた。この条件で作製した薄膜をKFK-PFの肌28にて真空紫外光による角度分解光電子分光測定を行ったところ、非常に明瞭なバンド分散を観測することができた。そこで次に、SrVO3(110)面の金属量子井戸構造の作製と量子状態の観測を目的として、SrVO3(110)面の極薄膜(7,10,13分子層)の作製を行い、その電子状態を角度分解光電子分光により測定した。垂直放出方向の角度分解光電子スペクトルより、SrVO3極薄膜の膜厚に応じて、いくつかのピーク構造が観測された。このピークは、i)膜厚の増加とともに高結合エネルギー側にシフトする、ii)観測されるピーク数が増加する、といった傾向を示した。この膜厚依存のスペクトル変化はSrVO3(001)面における金属量子井戸状態と同様なことから、SrVO3(110)面においても金属量子井戸状態が実現していると結論付けた。さらにこの金属量子井戸の電子状態を調べるため、角度分解光電子分光により観測された量子化状態の面内分散を測定した。その結果、理論計算と比較することでSrVO3(110)面の金属量子井戸においては、dxy軌道由来のバンドが量子化し、dyz/zx軌道由来のバンドは量子化していないことが明らかとなった。この結果はSrVO3(001)面での量子井戸における軌道選択的量子化とは真逆の結果であり、面方位を変えた極薄膜を作製することで同一の物質においても異なった電子状態を創製できるということを見いだした。
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