研究概要 |
本採用期間である3年間のうち、当該年度は2年目に当たる。当該年度の進捗は以下の通りである。 ■セキセイインコにおけるミュラー・リヤー錯視知覚実験を完了した。 セキセイインコ3個体に、画面に呈示された2本の線分のうちより長い(or短い、個体間カウンターバランス)方の線分を選択しつつくことを訓練した。その後矢羽の付着した線分でも同様の選択課題を行い、テストでミュラー・リヤー型刺激を呈示し、成績への影響を分析した。結果は、セキセイインコはミュラー・リヤー錯視をヒトと同方向に錯視知覚することを示唆するものであった。 この実験結果を日本動物心理学会大会にて口頭発表を行い、その際に聴衆より得られた助言を元に、既に得られたデータのより詳細な分析を行なったところ、セキセイインコのミュラー・リヤー図形知覚時の錯視量はヒトのそれよりも大きい可能性が示唆された。 ■セキセイインコにおけるアモーダル補間実験の一部(2個体/3個体中)完了 黒色画面に、4つの赤色ひし形を呈示し、それらのうち、四方のうちいずれか一方が欠けた赤色ひし形を探索し反応する課題を被験体に与えた。規定の達成水準に達した個体に対しては、各ひし形の周囲に白色正方形妨害刺激が呈示される条件で訓練を行なった。以上の訓練を完了した2個体に対し、テスト刺激として正方形が正解である欠けたひし形に重なって呈示される刺激をプローブ試行で呈示した。結果、被験体2個体の成績は、テスト刺激が訓練刺激と類似していないほど正答率が下がるというものであった。これは、訓練がテスト刺激に般化しなかったことを示唆する。また、同様の手続きで訓練が行われたハト(Ushitani, Fujita, Sato, 2004)やニワトリ(Nakamura, Watanabe, Betsuyaku, Fujita, 2010)での訓練よりも長い期間を訓練に要したこと、成績も伸び悩んだことから、課題の難易度がセキセイインコには高すぎた可能性が考えられる。
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