研究課題/領域番号 |
12J10242
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
開田 奈穂美 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 漁業協同組合 / 諫早湾干拓事業 / 有明海 / 大規模開発 |
研究概要 |
本年度は、九州の諌早湾および有明海周辺の漁業関係者への聞き取り調査によって、漁業者と漁業権および漁業者と漁業協同組合との関係を明らかにすることに注力した。 これまでの社会科学分野での関連研究においては、漁場環境に影響を及ぼす大規模開発事業のマクロレベルでの変遷を分析する枠組みと、漁業者等事業に影響を受ける人々の生活の変化を丹念に記述するミクロレベルでの分析枠組みとに分かれていた。それに対して本研究においては、諌早湾および周辺の有明海沿岸の漁民に対する丹念な聞き取りによって、大規模開発事業等、漁業者の生活に影響をおよぼす事業のマクロレベルでの変遷と漁業者の生活世界を介在しているアクターとして、漁業協同組合が重要な役割を担っていることを見出した。漁業協同組合という地域の政治構造に注目することによって、大規模開発事業の変遷と、漁業者の生活や社会関係が不可分に結びついていること描きだしたことによって、既存研究の問題点を乗り越えたと言えよう。 上記の枠組みに基づく研究結果として、干拓事業によって被害を受けているはずの諫早湾内の漁業協同組合が、工事期間中は事業推進をとなえ、工事が完了した現在でも事業への見直しを許していないのはなぜかを明らかにしたことが挙げられる。研究代表者は、漁協が補助事業等の疑似的受益から抜け出せなくなり、事業が完了した後にも漁場回復のための方策が取れなくなってしまうロック・イン状態にあることを明らかにした。その結果として、漁業協同組合が漁業資源を守る取り組みが取れなくなっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諌早湾干拓事業を事例とした漁業者への聞き取りは、計画以上の進展を挙げている。今後は他の事例についての研究および漁業権の果たす資源管理の役割についての批判的検討が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、他の事例との比較研究を行うことが挙げられる。研究計画においては宮城県および神奈川県の事例を扱うことが予定されていた。これらの事例研究を進めることによって、漁業権および漁業協同組合の役割についての包括的な理解が進むことが予想される。
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