研究課題/領域番号 |
12J10297
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
依田 毅 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | リポソーム / コレステロール / 酸化コレステロール / コレステロール誘導体 / ドメイン構造 / 脂質ラフト / 酸化ストレス / 酸化脂質 |
研究概要 |
コレステロールは膜構成成分として重要な脂質である。コレステロールが酸化を受けて産生される酸化コレステロールは、動脈硬化の原因となるなど生活習慣病のリスクファクターとして知られている。また、いくつかのコレステロール誘導体は室温付近において液晶状態で色調変化を示すことから温度計として利用されている。近年我々は、酸化コレステロール含有膜の揺動が高い温度応答性を示すことを見出している。酸化コレステロール含有膜の室温付近の温度上昇による揺動とコレステリック液晶温度計の色調変化は互いに関連性があるものと思われた。 不飽和リン脂質1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DOPC)とコレステロールからなるリポソームに、Benzoをモル濃度6.25%で加え、酸化コレステロール含有リポソームとの熱応答性を比較した。次に、Langmuir単分子膜を作成し、温度変化に対する分子面積値の比較を試みたところ、BENZO含有膜は酸化コレステロール含有膜と同様に温度変化に対してリポソーム膜の揺動および膜分子面積値の増加が観察された。そしてさらに、Cholesterol pelargonate(Chol-PA)、Cholesterol oleyl carbonate(Chol-OC)、Benzoからなるコレステリック液晶と、Benzoの代わりに酸化コレステロールを含有するものを作成し、温度変化に対する偏光特性を調べた。また、従来のコレステロールだけを含む膜の相図に比べ、コレステロール、7ketoを両方含む膜ではドメイン構造を持つ濃度域が少なく、7ketoのみを含む膜ではドメイン構造を持つ濃度域が多くなることを発見した。酸化コレステロール含有生体膜およびコレステリック液晶の温度応答に関する様々な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化コレステロール含有生体膜およびコレステリック液晶の温度応答に関する様々な知見が得られ、1報の原著論文、2報の国際会議プロシーディングス、15回の学会発表という報告が出来ており、順調に研究が進捗していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
従来のコレステロールだけを含む膜の相図に比べ、コレステロール、および酸化コレステロール(7-ketocholesterol,(7keto))を両方含む膜ではドメイン構造を持つ濃度域が少なく、7ketoのみを含む膜ではドメイン構造を持つ濃度域が多くなることを発見した。現在このドメイン構造について温度応答を指標とし、安定性を特徴付けようと試みている。結果から、このドメイン構造や安定性に関してのメカニズムを親水性相互作用も考慮に入れ考察中である。さらにコレステリック液晶、膜ドメイン構造についても、詳細について、現在準備中の投稿論文を完成させたいと考えている。
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