研究概要 |
1.抗トラフグCD4抗体を用いたCD4^+T(Th)細胞の分取 養殖魚であり、ゲノムデータベースも充実しているトラフグ(Takifugu rubripes)を対象に研究を行った。Th細胞の分取に用いた抗トラフグCD4抗体はトラフグCD4を発現させた動物細胞(CHO)およびトラフグ末梢血白血球のライセートを用いて特異性を確認した。末梢血白血球(PBLs)から純化したT細胞に対し、抗トラフグCD4抗体を用い磁気細胞分取法によってTh細胞の分取を試みた。分取した細胞の特性を解析するため、蛍光標識された2次抗体と反応させ、蛍光顕微鏡観察した結果、ほぼすべての細胞で蛍光が確認された。またFCM解析から95%以上の非常に高い純度でのTh細胞が確認された。さらに細胞マーカー遺伝子の発現解析からT細胞群の中でもCD4陽性の細胞が分取したことが確認された。 2.Th細胞の免疫刺激後の発現動態の解析 PBLsをグラム陰性菌(大腸菌)の細胞壁外膜の構成成分であるリポポリサッカライドド(LPS、疑似細菌感染)や合成二本鎖RNA(polyI:C,疑似ウイルス感染)またはT細胞マイトジェンであるコンカナバリンA(Con A)でin vitro刺激し、各刺激区から継時的にCD4細胞を分取した。さらに、本細胞におけるThサイトカイン遺伝子(Th1系:IL-2,IFN-γ,TNF-α,Th2系:IL-4/13A,IL-4/13B,Th17系:IL-17A/F3,Treg系:TGF-β1,IL-10)の発現を、Multiplex RT-PCRアッセイで解析した。その結果、LPSおよびpolyI:C刺激は、Th1,Th2,Th17およびTregのサイトカインの発現を増強し、Th2サイトカインの発現を減少させた。また、ConAは全サイトカイン遺伝子の発現を増強させた。しかしながら、各刺激におけるサイトカインの発現レベルは異なった。このことから、魚類のTh細胞も哺乳類と同様に、免疫(病原体)刺激に応じて異なるサイトカインを産生するサブセットが存在する可能性が示唆された。
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