研究課題/領域番号 |
12J10303
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
是永 大樹 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | フグ / CD4+T細胞 / Thサブセット / 抗原提示細胞 / フローサイトメトリー / 細胞分取 / 細胞内サイトカイン染色 |
研究概要 |
1. トラフグCD4^+T (Th)細胞の分化制御機構の検討 最終年度ではTh細胞の分化機構のさらなる解明を目的とし、細胞内サイトカイン染色法を用いた研究を行った。細胞内サイトカイン染色とは細胞を抗原もしくはマイトジェンとともに培養することで、活性化されたサイトカインを産生する細胞をタンパク質・細胞レベル検出する測定系である。まず、トラフグの組換えIFN-γおよびIL-4/13Aを大腸菌タンパク質合成系で作製し、CD4^+T細胞に作用させたところ、哺乳類と同様にTh1およびTh2サイトカインの産生がそれぞれ増加することがフローサイトメトリー解析から明らかになった。これらの結果は、魚類においても特異的なサイトカインを産生するCD4^+T細胞が存在し、さらにサイトカインによる分化制御機構を有していることが示唆された。 2. トラフグ単球細胞のサイトカイン発現動態に関する研究 ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)から抗原刺激を受け、APCおよびTh細胞自身から産生されるサイトカインによって活性化する。そのため、Th細胞の分化制御において抗原提示細胞の働きは重要である。そこで、抗原提示能を持つ単球の活性化や分化の制御機構をサイトカイン遺伝子の発現動態から検討した。まず、トラフグの末梢血より単球を分離し、形態観察、フローサイトメトリー(FCM)解析および細胞マーカーの発現解析を行った。分離された単球に対し免疫誘導物質(LPS、polyI : C、IMQ)で刺激した結果、新たな細胞集団がFCM解析によって検出された。この細胞集団は、刺激前の単球集団と比べ高い貧食活性を示した。さらに、単球の活性化に重要なCSF-1bだけでなく、Th細胞の分化誘導に深く関係するIFN-γなどのサイトカイン遺伝子の発現増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度において、魚類におけるCD4^+T(Th)細胞およびTh細胞の分化制御に大きく関与する抗原提示細胞である単球の特性を解析する研究を行った。その結果、免疫刺激によって魚類の単球が活性化し、Th細胞の分化を誘導するサイトカインの発現も確認された。さらに組換えサイトカインによってTh細胞の分化が誘導された。これらの結果より、哺乳類と同様に魚類免疫担当細胞においてもサイトカインによる複雑な制御機構が形成されていることが推察された。これらの結果より、当初の計画が順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において、魚類におけるTh細胞の分化制御の解析を行ってきた。魚類にはCD4やサイトカインに特有の分子が存在することが分かっている。今後の研究では、Th細胞に関与する魚類特有の分子を対象に研究を推進する。具体的な研究としては、魚類サイトカインの組換え体および抗体をさらに作製し、Th細胞の分化制御についてのさらなる解析などが挙げられる。 また、Th細胞だけでなく他の免疫関連細胞の特性を解析することで、これまで明らかにされていなかった魚類の免疫機構が解明される可能性がある。
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