研究課題/領域番号 |
12J10318
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松坂 雅子 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 近代史 / 経済史 / 技術教育史 / イギリス / デザイン学校 / 絹 / arts of design |
研究概要 |
本研究の目的は、19世紀前半にイギリスで行われた技術教育への国家介入と、当時の製造業上の問題との関連性を明らかにすることである。 そのために本年度行った研究内容は二つである。第一に、イングランドにおける初の政府立技術教育機関であるデザイン学校(School of Design)を中心に、1830年代に「デザインの技術(arts of design)」の振興運動が教育政策として結実した背景を考察した。デザイン学校の設立の動きをどう理解するかは、その多面的な性格ゆえに、現在も論争中である。報告者は、デザイン学校評議会議事録や、デザイン学校校長の個人文書(本年度末の史料調査時に収集)等を用い、デザイン学校設立の目的が絹業の振興にあることを明示し、当時のイギリスにおける絹業の位置付けを行いつつある。 第二に、デザイン学校設立の発端となった絹業が当時いかなる問題を抱えていたのかを分析するための基礎的作業を進めた。先行研究の収集・整理、データの収集・入力を行い、イギリス絹業の様相を描き出すことを試みた。また関連しうる文書館への問い合わせにより、史料の所在の情報を集めた。その後、具体的にいかなる地域、企業を対象にするのが適当であるか、対象の特定に努めた。これらの作業をふまえ、年度末にはロンドンとコヴェントリにおいて史料収集を行った。コヴェントリ・ヒストリー・センターでは、アーキヴィストや、同センターが位置するハーバート・ミュージアムのキュレーターの方の協力を得ながら調査を進めており、来年度にも継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
項目9の第一の点、すなわち技術教育政策分析について、論文執筆を通じて今年度中に結論を下すという、当初掲げていた目標には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
項目10で言及した、新たに存在についての情報を得たコヴェントリの絹業に関連する史料を中心に、史料調査を来年度初めに行う。 また、項目11で述べた通り、技術教育政策についての考察に区切りが付いていないため、この作業に専念する時期を設ける。今年度末の史料調査で新たに入手した史料を使うことで考察の結果が出る見込みである。
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