研究課題/領域番号 |
12J10366
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前本 佑樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | calpain / ESCRT / MIT / ALIX / calpastatin / エンドサイトーシス / エンドソーム / プロテアーゼ |
研究概要 |
エンドサイトーシス経路において、モノユビキチン化された細胞表面レセプターなどの選別輸送を担う多胞性エンドソーム(MVB,multivesicular body)が形成される。この現象に関与する一群のタンパク質複合体がESCRTであり、システインプロテアーゼcalpain-7もMITドメインを介して種々のESCRT関連因子と結合することから、ESCRTタンパク質によるcalpain-7への関与が想定された。calpainファミリーは活性化に伴う自己消化が報告されているが、N末端にGFPを融合させたGFP-calpain-7は主要なESCRT因子であるTSG101等の過剰発現で自己消化が促進される。近年ESCRT関連因子ALIXがTSG1O1の結合によりコンホメーション変化し、エンドソーム膜に移行することが報告された。ALIXとcalpain-7の関係について調べたところ、人工的にオープンコンホメーションとなるALIXΔC変異体(1-660)は自己消化を促進しなかったが、calpain-7依存的に限定分解された。この現象を応用して、ALIXのBro1ドメインの後に典型的なcalpainの基質であるcaseinと細胞内在性阻害剤であるcalpastatinのドメイン1(D1)を融合した人工タンパク質を作成しcalpain-7による分解実験を行ったところ、caseinは分解されず、calpastatinD1が限定分解を受けた。このことから、典型的calpainと異なる基質認識機構であることが考えられた。またFLAG-ALIXBro1-calpastatinD1-GFPを作製し、GFP抗体を用いて分解断片を精製し、そのN末端配列を決定した。その配列は従来のcalpain分解配列と大きく異なるものだった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初は、昆虫細胞発現系を用いたin vitroの系でcalpain-7の自己消化促進条件を検討したが、十分な活性化は起こらなかった。そのため、calpain-7の活性化には細胞内の相互作用因子や何らかの刺激が必要であることが推測される。その一方で、人工的ではあるが、calpain-7が分子間で切断するタンパク質を発見することができ、これまで不明だったcalpain-7の構造上の特徴に関する知見を得られたことは画期的であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおりcalpain-7ノックアウトマウスより取得したMEF細胞にレトロウイルスベクターを用いてcalpain-7およびその活性中心変異体(calpain-7^<C290S>)を入れ戻した細胞株を樹立した。これを用いて新たにエンドサイトーシスの典型的な積荷分子であるEGFR(Epidermal growth factor receptor)のリソソームでの分解がノックアウト細胞では遅れていることを明らかにした。さらに、その分解にcalpain-7のプロテアーゼ活性が重要であることも明らかすることができたため、calpain-7の基質がエンドソーム関連因子である可能性を考慮に入れて研究を進める。
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