親の教育水準が子の最終学歴に与えるAverage Treatment Effect (ATE)をノンパラメトリックなバウンド分析の手法で推定した。今年度は特に、父と母の教育を二つのtreatmentsとし、両親の教育水準の「組み合わせ」が与える効果を"multiple treatments"の枠組みで分析した。 主要な分析結果は以下の通りである。推定された因果効果の最もタイトなバウンドは、下限が統計的に有意に正であるものの、上限は最少二乗法の推定値を下回ることを示した。この結果は、親の教育が子供の最終学歴に対し、ゼロではないプラスの効果を持つことを示す。しかし、その因果効果は先行研究が最少二乗法で得た推定値ほどは大きくないことを示唆している。 本研究の貢献は、初めて日本のデータを用いて親の教育のATEをバウンド分析した点に加え、multiple treatmentsの枠組みで分析した点にある。先行研究は、母・父それぞれの効果を別々に分析する、二人の教育年数を足し合わせて一つの変数とする、両親の教育を含めて重回帰分析するが内生性は無視する、のいずれかであった。今年度の研究では、前年度に得られたsingle treatmentの分析結果と同様に、multiple treatmentsの場合でも、単純な回帰分析や平均の差から得られる推定値が上方にバイアスしていることを明らかにした。この点は意義ある成果の一つと考えられる。 得られた成果を論文としてまとめ、第16回労働経済学コンファレンスと日本経済学会2013年度秋季大会において報告した。第16回労働経済学コンファレンスでは、ポスターセッション最優秀賞を受賞した。
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