本年度は、研究ターゲットに設定している高等植物の光捕集アンテナ色素タンパク質 LHCIIと、含まれる色素のひとつであるクロロフィルb、およびそのモデル化合物の物性・反応性に関する研究を推進した。LHCIIに関する研究では、高等植物であるほうれん草からショ糖密度勾配遠心法を用いて LHCIIを単離精製し、その色素組成、タンパク質組成、分光特性を電気泳動法や分光分析で調べるとともに、LHCIIに結合しているクロロフィルaとクロロフィルbの化学反応性を可視吸収分光法、円二色性分光法、定常蛍光分光法、高速液体クロマトグラフィー分析によって解析した。 クロロフィルbとそのモデル化合物に関する研究では、クロロフィルbを出発原料としホルミル基を2個保持するクロロフィル誘導体を合成した。また、クロロフィル色素の分解過程で重要である脱金属反応について、合成したジホルミルクロロフィル誘導体とクロロフィルa/b/d誘導体を用いて解析し、構造に依存した脱金属反応特性を解明した。さらに、それら誘導体のFT-IRスペクトルを測定し、3位ホルミル基と7位ホルミル基のクロリン環に対する共役の違いについて考察した。 本研究の成果は、筆頭著者として査読付原著論文を2報(J. Porphyrins Phthalocyanines、Bioorg. Med. Chem.)発表している。あわせて、国際学会と国内学会でのポスター発表を2件行った。
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