研究課題/領域番号 |
12J10485
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
工藤 哲弘 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 共鳴光ピンセット / 共鳴光マニピュレーション / 輻射力 / ラビ振動 / 非線形光学効果 / Optical tweezers / Optical manipulation / Optical trapping |
研究概要 |
第一にこれまでの我々の研究成果である非線形光学効果を利用した光マニピュレーションの理論提案が、今年度、招待論文として英王立化学会の名門誌「Physical Chemistry Chemical Physics」のPerspectiveとして掲載された。 25年度の研究結果は、当初の研究の目的に従って、フェムト秒レーザーまで含めた非線形共鳴光輻射力理論への拡張することで、コヒーレント過渡現象まで取り入れた共鳴光マニピュレーションの議論が出来るようになった。具体的にはその結果、散乱断面積が波長の4乗に逆比例して小さくなるため、従来まで遠赤外の光では難しいとされてきた物質輸送が、ラビ振動と永久双極子モーメントの役割を利用することで、遠赤外やテラヘルツ波での光マニピュレーションが可能になることを理論的に示した。これはこれまで我々が着目を当ててきたナノ粒子輸送のみならず、テラヘルツ波検出器にも応用出来る可能性があるまた、二光子吸収に起因していると考えられる共鳴光ピンセットの実験を行うために、昨年度に引き続き2ヶ月間、台湾にある国立交通大学に滞在した。集光点に捕捉された色素ドーブナノ粒子をハロゲンランプからの散乱光強度と色素からの二光子蛍光強度を観測し、CWレーザーの場合でも、色素がドープされていない場合と比べて、捕捉効率が向上することがわかった。色素は、CWレーザーで二光子吸収することから、非線形光学効果が原理の起源に起因していると考えられる。 以上、25年度は、理論的に非線形光学効果を利用した光マニピュレーションの可能性と期待を明らかとした。また実験的には、今後多くの課題が残されているが、実験事実として色素ドープに影響があることを明らかとし、非線形光学効果の影響を念頭に置き原理を明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的であった理論拡張と台湾での実験は両者遂行することが出来た。その上でさらに、実験でもそうであるが特に理論では、テラヘルツ波による光マニピュレーションの可能性を示し、今後、追及すべき多くの興味深いテーマを発見した。この点で、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題においてこれまで我々は新しい知見を発見したことで、大きく芽吹く可能性のある引き続き遂行すべきテーマや課題を発見した。今後これらを遂行するために、私は、本研究課題遂行時に全体を通して5ヶ月間滞在した台湾国立交通大学に海外特別研究員として派遣し実験も行い、非線形光学効果を活用した光マニピュレーションを実験的に実現する予定である。具体的には、本研究課題中で得られた実験結果の原理を様々な実験手段から明らかにすることを考えている。
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