研究課題
近年、哺乳類の視床下部において、神経ペプチド「キスペプチン」および「ニューロキニンB(NKB)」が性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)および性腺刺激ホルモン(GTH)分泌の制御に重要であることが分かってきた。本研究は、ウシの繁殖機能制御機構におけるこれら神経ペプチドの役割を解明するとともに、これら神経ペプチドをウシの新たな繁殖機能制御技術に応用することを目的とした。本年度は、キスペプチンの末梢投与がウシの卵胞成熟を促し、発情および排卵のタイミングを早めるか否かを明らかにすること、および、NKBの末梢持続投与がGTH分泌および卵胞発育を促すか否かを明らかにすることを目的とした。実験1では、卵胞期ウシにおいて、キスペプチンを静脈内投与し、GTH分泌、卵胞発育動態および発情行動におよぼす効果を調べた。その結果、キスペプチンの静脈内投与後、GTH分泌が持続的に亢進し、発情行動および排卵のタイミングが早まった。これらのことから、キスペプチンの末梢投与が、GnRHおよびGTH分泌を介して卵胞の成熟を促し、発情および排卵のタイミングを早めたことが考えられた。実験2では、初期黄体期ウシにおいて、NKB受容体選択的アゴニストであるsenktideを末梢持続投与し、GTH分泌および卵胞発育動態を調べた。その結果、senktideの持続投与開始後、GTH分泌が持続的に亢進し、卵胞直径が増加した。これらのことから、senktideはGnRHパルスジェネレーターを活性化し、GnRHおよびGTH分泌を介して卵胞発育を促したことが考えられた。これらの結果から、キスペプチンおよびNKBはGnRH/GTHを介して卵胞成熟を促し、ウシの発情および排卵をコントロールする製剤として応用できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、卵胞期ウシにおけるキスペプチンの末梢投与が卵胞成熟を促進し、発情および排卵を促すことを明らかにした。
卵胞期ウシにおけるキスペプチン末梢投与実験および黄体期初期ウシにおけるニューロキニンB末梢持続等実験の例数を足すとともに、卵胞期ウシにおけるニューロキニンB末梢投与による卵胞成熟促進作用、および、発情および排卵におよぼす効果を検討する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Neuroendocrinology
巻: 24 ページ: 1234-1242
10.1111/j.1365-2826.2012.02330.x.