研究課題
今年度は、南コーカサス地方における新石器化に伴う骨角器製作の変化を明らかにするという目的のもと、アゼルバイジャン共和国の新石器時代に年代付けられるギョイテペ、ハッジ・エラムハンルテペ出土の骨角器資料の分析を中心に行った。具体的には、これらの遺跡から出土した骨角器資料を器種分類、出土数、原材料の選択、製作技術の四つの点から比較検討を行った。その結果、より古い段階に年代付けられるハッジ・エラムハンルテペ(紀元前六千年紀初頭)から、新しい段階にあたるギョイテペ(紀元前六千年紀前半~後半)にかけて、器種の幅の増加、出土数の増加、原材料の多様化、製作技術の簡略化という変化を追うことができた。これらの変化は両遺跡間における骨角器製作に対するコンセプトを示していると考えられる。さらに、そのコンセプトの変化は、単なる製作者の嗜好というよりも、両遺跡間における年間の骨角器の製作・使用の期間の差異や、製作段階における原材料の利用可能数の差という点を反映している可能性が高いと解釈することができる。重要な点はこの変化が、紀元前六千年紀初頭の極めて短期間の間に起こったという事である。また、ハッジ・エラムハンルテペ出土の骨角器は南方のアルメニアや遥か西南方の東トルコの新石器時代遺跡で報告されているものと極めて類似しており、当地の新石器時代の開始期におけるそれらの地域との強い関係性を指摘することができる。これらの点から、当該期に南方より新石器化の波が波及し、それが紀元前六千年紀初頭のわずか百年程度で南コーカサス型の新石器時代の形成へとつながったという流れを追うことが可能になった。
3: やや遅れている
このような評価となった大きな理由のひとつは、取り扱う遺跡と資料数が限定されていることに因り、明らかとなった傾向がどの程度まで適用することができるのかが不明確であるためである。また、当初掲げていた骨角器と動物遺存体を相互に関連付けて理解するという目的が果たされておらず、今後の課題として残されている。
基本的には今年度までに続けてきたように、南コーカサスの新石器時代遺跡から出土している資料の分析を継続していく予定でいる。しかし扱う資料の都合上、研究の流れが調査の進展に大きく影響を及ぼすため、今年度は他地域における新石器時代初頭の資料の分析を行い、比較研究を行っていく。
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西アジア考古学
巻: 15(印刷中)
平成25年 度考古学が語る古代オリエント 第21回西アジア発掘調査報告会報告集
巻: 2013 ページ: 40-46
Excavations at Tell Ali al-Hajj, Rumeilah, in Northern Syria.
巻: (印刷中)
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Archäologische Mitteilungen aus Iran und Turan
巻: 2013(印刷中)