研究課題/領域番号 |
12J10507
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
門田 吉弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | BCAA / BCKDH複合体 / BDK / Cre-loxPシステム / 部位特異的ノックアウト |
研究概要 |
分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素(BCKDH)キナーゼ(BDK)は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝における律速酵素であるBCKDH複合体を不活性化することで、BCAAの過度な分解を抑制している。骨格筋は、他の組織と比較してBDKの活性が高いことから、BCAAの貯蔵器官として機能していると考えられている。本研究では、骨格筋特異的にBDKをノックアウトしたマウス(筋特異的BDK-KOマウス)を作製し、骨格筋におけるBCAAの欠乏がグルコース代謝に対してどのような影響を示すのかを検討することを目的としており、今年度は筋特異的BDK-KOマウスの作製を行った。 本研究では、既に報告されているCre-loxPシステムを用いて筋特異的にインスリン受容体を欠損させる方法をBDKに応用することで、筋特異的BDK-KOマウスを作製した。マウスにおけるBDKのゲノムDNAを単離し、エクソン9-11(BDK活性部位をコードするエクソン)をloxPで挟み込んだターゲティングベクターを調製して実験に用いた。このベクターを胎性幹細胞(ES細胞)に挿入して相同組み替えを起こしたES細胞を単離し、胚盤胞の腔内に注入することによりキメラマウスを作製した。次いで、C57BL/6N系統のマウスと交配させ、得られた仔マウスのゲノムDNAをPCRによる相同組換えの有無を確認することにより、BDKの対立遺伝子の片方がloxPにより挟み込まれた組換えマウス(BDK-floxedヘテロマウス)を作製した。その後、FLPを発現するトランスジェニックマウスと交配させることでES細胞を単利するために導入していた薬剤耐性遺伝子を除去し、さらに筋肉特異的に発現するクレアチンキナーゼのプロモーターを持ったCreリコンビナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスと交配させることで筋特異的BDK-KOマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BDK-floxedヘテロマウスを作製するためには、キメラマウス作製時にインジェクションしたES細胞が生殖細胞に分化される必要がある。しかし、1度目のトライアルでは、作製した20匹のキメラマウスすべてにおいて生殖細胞への分化が確認されず、キメラマウスを再度作製する必要に迫られた。そのため、筋特異的BDK-KOマウスの作製は成功したが、研究計画に記載した筋特異的BDK-KOマウスの特徴解析までは完了させることができなかった。以上のことから、達成度に関しては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成24年度において作製に成功した筋特異的BDK-KOマウスを10週齢まで飼育し、飼育期間中の体重の増加や摂食量に対する影響を調べる。その後屠殺を行い、各臓器におけるBCKDH複合体活性や遊離BCAA濃度、血中BCAA濃度を測定する(筋特異的BDK-KOマウスの特徴解析)。(2)8週齢の筋特異的BDK-KOマウスを標準食群と高脂肪食群に分け、約12週間飼育する。群分けから10、11週目において糖負荷試験およびインスリン負荷試験を実施することで筋特異的BDK-KOが耐糖能およびインスリン感受性に与える影響について検討する。変化が見られた場合は、屠殺により各組織を採取しメカニズムを解析する。また、8週齢の筋特異的BDK-KOマウスを高脂肪食群と高脂肪食+運動トレーニング群に分け、同様の実験を実施することで、運動トレーニングによるインスリン抵抗性の改善にBCAAが関与しているか検討する。
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