研究実績の概要 |
最終年度では以下の項目の通り、研究を遂行し、取りまとめを行った。 1. 文化財の生物劣化に関わる微生物群のモニタリング 本項目では、歴史的建造物から得た試料について濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)法や次世代シーケンスによる解析を行い、多様な環境下にある文化財中に存在する微生物叢のモニタリングを行った。昨年度以前は、神社のこけら屋根や油画、掛軸等を対象としたが、本年度はさらに対象を拡げ、トルコ・イスタンブール大学との共同研究で木造沈没船や出土木材、京都大学との共同研究で屋久杉などの試料をご恵与頂き様々な解析手法を用いてモニタリングを行った。本年度はさらに菌類のみならず細菌類の菌叢解析を行った他、京都大学との共同研究で透過型電子顕微鏡による観察を行っている。これらの結果については、国際学会で4件発表した。旧石器時代の出土木材のモニタリング結果については保存科学誌への採録が決定しており、それ以外のサンプルについての結果は現在査読付論文に投稿準備中である。 2. ターゲットとする遺伝子の検討 昨年度以前に特定の遺伝子配列を用いることで定量解析や木材腐朽菌の特性を反映した分類ができる可能性について示した。そこで昨年度に引き続き本年度も米国クラーク大学に留学し、アメリカ農水省のゲノムデータベースを用いて菌類のハウスキーピング遺伝子や糖質加水分解酵素遺伝子配列を用いて配列解析を行った。具体的にはBeastソフトウェアを用いて分子時計解析を行い、さらにDataMonkey, Paml, HyPhyなどの解析ソフトウェアを用いてdN/dS比検定をおこなった。現在論文投稿に向けてこれらの解析結果について取りまとめている。
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