研究概要 |
電気味覚付加装置の構築と評価: 両方の極を口内に提示し味提示を行う両極型装置,片方の極のみ口内に提示し,もう片方の極を人体表面に配置する一極型装置の2種を提案した.これら装置の形状は,日常の飲食行為での使用を視野に入れ,飲料用装置としてカップ型,食料用装置としてフォーク型をそれぞれ構築した. 提示刺激と誘起される味質変化における評価,編集・配信機構の充実: 一極型装置の構築により,飲食物に付加する際に提示できる味質のバリエーション増加や,食材の風味の調整が可能となった.電気味覚は極性によって味質が異なることは先行研究で知られているが,飲食物を対象に調査を行った点と,味質の付加だけでなく食材自身の風味が調節出来る可能性が見出された点が特徴である. 電気味覚の代替味覚利用に向けた評価実験と活用手法構築: 電気刺激・特に陰極刺激を用いた塩味知覚の制御手法について提案した.これは減塩食など塩分量の少ない食事の塩味を,塩を新たに足すことなく濃く感じさせることができる装置である.装置は塩味を含む飲食物の飲食直後に陰極刺激の提示と停止を自動的に行う.この装置の実装には,先に説明した一極型装置の構造を活用した飲食検知手法が活用されている. この効果は,健康を配慮した食事を摂取せざるを得ない当事者や関係者に生ずる,節制や制限における心的負担を軽減させ,食事における精神的充足を確保することから,減塩食の継続にも貢献できると考えられる.申請当初は電気味覚を何かの味を代替する味覚として活用することを検討していたが,本研究により,代替的に利用するだけでなく,利用者の知覚に変化を与えられる技術としての進展が見込まれた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
塩味知覚の制御手法における装置の開発と評価について研究及び発表が,本研究における有用性,社会貢献性を高めた点が第一にあげられる.その他においても,研究の目的に対しある程度網羅的に達成されており,それらの学会発表でも評価されている(受賞等)ことから,当初の計画以上の進展があると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,装置及び各種手法の中期評価や,実用化に向けた細部評価を行うとともに,電気味覚による味質変化の利用領域として,健康維持における食支援と融合させる方向で提案・開発を行う予定である.
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