本研究では、最近開発した液中での局所電位分布を計測することができるオープンループ電位顕微鏡(OL-EPM)の性能向上のために、以下のことに取り組んだ。 1)空間分解能の改善:理論上、カンチレバーの共振周波数を高くすることで力検出感度が向上し、空間分解能が改善される。従来のものより1桁以上高い共振周波数をもつ小型カンチレバーを用いてCaCO_3表面の原子スケールでの3次元力分布計測を行ったところ、表面から離れた水和層まではっきりと可視化することに成功した。このことから、小型カンチレバーが空間分解能の改善に有効であることを実証できた。この結果は、液中FM-AFMのイメージングメカニズムの理解に関する海外の理論研究グループとの共同研究にも関係しており、IFの高い雑誌へ投稿する準備を進めている。 2)絶縁体基板上での電位計測:従来は導電性基板上での計測しかできなかったが、数μmの厚さしかない絶縁体基板とポテンショスタットを利用した電位の値の新規補正技術を利用することで、絶縁体基板上での電位計測の可能性を見出した。この方法が確立すれば、マイカに固定された生体分子などの電位計測が可能になると期待される。 3)産業分野への応用:ステンレスやCu微細配線は使用環境や製造過程において腐食することが知られている。OL-EPMを用いてそれらの液中電位分布計測を行い、腐食メカニズムとの関連性について評価した。その結果、腐食の起こりやすい箇所と電位分布に関連があることが分かった。また化粧品に使用される材料の物性評価にもOL-EPMを用い、予想されていた結果と近い結果が得られた。これらのことから、OL-EPMが様々な分野に応用できる可能性を示した。
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