研究課題/領域番号 |
12J10550
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 大祐 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 睡眠・覚醒 / 局所場電位 / デルタ波 / 同期性 |
研究概要 |
日本人の睡眠時間は、50年間で約1時間減少している。合わせて、不眠症の患者も増加しており、有症率は約20%と非常に高い。不眠症の代表的な症状として、深い睡眠に入ることができない、入眠困難がある。不眠症の治療のため、深い睡眠を生じる脳メカニズムの解明が期待されている。深い睡眠であるノンレム睡眠時は、デルタ波と呼ばれる低頻度の脳波が特徴である。デルタ波は、感覚応答を下げ、深い睡眠との関連が示唆されている。一方で、デルタ波によってシナプス可塑性が生じることにより、覚醒時に生じたシナプス可塑性が補正されるという、シナプス恒常性理論も提唱されている。 まず研究代表者は、脳波に比べて、より局所的な神経活動を反映している局所場電位を前頭葉・頭頂葉の左右両側から記録した。覚醒時に比べてノンレム睡眠時においては、前頭葉と頭頂葉の局所場電位におけるデルタ波の同期性が上昇することを解明した。次に前頭葉、頭頂葉の間をブレードによりカットする手術を行ったところ、脳波のデルタ波が減弱し、ノンレム睡眠時における触覚刺激に対する運動応答が増強した。これらより、前頭葉一頭頂葉間の情報連絡は深い睡眠に重要であると考えられる。 実験手技については、NTS出版「オプトジェネティクス-光工学と遺伝学による行動制御技術の最前線」にて総説としてまとめた。研究代表者が技術を有するインビボ動物における局所場電位記録を用いて、てんかんの発生メカニズムを解明し、Nature Medicine誌に査読論文として受理された。また、てんかんやうつ病等の治療に用いられる迷走神経刺激法が海馬のシナプス可塑性を調節するメカニズムを解明し、International Journal of Neuropsychopharmacology誌に査読論文として受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
低頻度のオシレーションが特徴であるNR,EM睡眠について、それを制御する多様なメカニズムを解明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
NREM睡眠時に生じる低頻度のオシレーションが、シナプス可塑性に与える影響を解明する。
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