研究課題/領域番号 |
12J10554
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲守 孝哉 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 小型人工衛星 / 姿勢軌道制御 / 磁気応用 |
研究概要 |
本研究では超小型衛星に搭載可能な電磁力を用いた推進器を提案し、超小型衛星の軌道変更可能なミッションへの応用を可能とする事を目的としている。この目的を達成するために最初に提案手法についてFEMによるシミュレーションを実施し有効な電磁力を得る事が可能かどうかについて検討を行った。その結果、提案手法そのままでは以前検討していた軌道制御を達成できない事が分かった。したがって新たに電磁力を用いた以下の軌道制御手法についてその実現性について検討を行った。 1.衛星磁気モーメントと地球磁場との作用による電磁力を用いた小型人工衛星の軌道制御手法 2.宇宙プラズマと衛星磁気モーメントを作用させて推力を得る軌道制御手法 1,2について軌道シミュレータを組んでその有効性について確認した。その結果、1の手法については有効な推力を得るためには非常に大きな磁気モーメントが必要である事がわかった。このような磁気モーメントを達成するために展開膜などに電線を張り付けて大きな面積をかせぐ事で達成する事を検討した。これらの展開膜の方向や形状制御も電磁力で制御する事を検討した。 2の手法では、宇宙プラズマは地球近傍に限らず惑星間においても太陽風からのプラズマが存在するため、宇宙空間の様々な場面において用いる事が可能である事がわかった。しかしながら有効な推力を得るためには衛星が比較的大きな磁気モーメントを持つ必要があり、本研究では超電導コイルを用いて大きな磁気モーメントを達成する手法を検討した。特に超電導状態を達成するために冷凍機を用いず放射冷却のみにて高温超電導体の超電導状態を維持可能ある事をFEMを用いて確認した。 これらの検討結果は、推進器を検討する上での基礎検討項目であり、今後さらに詳細な検討を行い提案推進器のフィージビリティーについて確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は有効な軌道制御器を持たない超小型衛星において有効で搭載可能な電磁力を用いた軌道変更推進器を提案する事を目的としている。研究開始初年度では軌道変更手法について可能性のある手法を洗い出し実現可能性の高い手法に検討を絞る事、簡易なモデルを用いた検討によってその有効性について確認する事を目的としていた。本年度の検討では1、地球磁場との作用により推進力を得る手法、2、宇宙プラズマとの干渉により推進力を得る手法について簡易モデルによりその有効性について確認した。従って当初の予定通り研究は進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進めるにあたって姿勢軌道制御器から出力できるトルクや推進力が宇宙プラズマ濃度やその種類に大きく依存する事がわかった。従って、これらの環境についてよく考慮した上で今後研究を進める必要がある。宇宙プラズマ環境を考慮して今後研究を進めていく事を目的に、平成25年度はロシア科学アカデミー傘下の宇宙研究所(Space Research Institute)に滞在し、宇宙プラズマについて人工衛星の計測データから解析を行っているプラズマ研究グループに所属して研究を進める。さらにロシア宇宙研究所内にある軌道制御グループともミーティングを頻繁に行い、宇宙プラズマを用いた軌道制御方法についても検討を進める。
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