本研究は動的な環境下で適切に情報処理を行う脳の機能・機構の解明を目指し、雄カイコガの匂い源定位行動を対象に、行動中の神経活動の解析、および行動指令信号により駆動される移動ロボット「脳‐機械融合システム」を用いることで、この課題に正面から取り組んだ。 行動中の神経活動解析においては、カイコガ脳内への埋め込み電極による慢性計測により、前大脳領域において,歩行に先行して発火する神経活動が,歩行中の前進速度および回転角速度と相関することを明らかにした。これらの神経活動は匂い刺激により引き起こされるが,活動ユニットの中には視運動反射応答を示すユニットが存在することを明らかにした。 匂い源定位行動中の左右ターン行動を指令する運動神経活動により駆動されるロボットを用いた実験系「脳‐機械融合システム」においては、匂い源探索中の行動指令の神経活動が視運動反射応答により修飾を受けることを明らかにした。指令信号の修飾による歩行中の回転角速度の調節が、効率的な匂い源探索を実現していることを、シミュレーション実験、ガスセンサおよび行動アルゴリズムを搭載したロボットを用いた実機実験により検証した。これら一連の成果は、International Congress of NeuroethologyおよびNeuroscience2014において発表され,前者においては最優秀発表論文賞を受賞した。今後これらの成果を投稿論文として順次発表していく予定である。
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