研究課題/領域番号 |
12J10593
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
土井 章 近畿大学, 薬学研究科, 特別研究員(DCI)
|
キーワード | PKC / MAPK / 細胞内シグナル伝達 / RNA分解システム / P-body |
研究概要 |
PKC/MAPKシグナルは細胞の増殖のみならず、がん化の病態にも深く関与しているため、MAPKの活性化と抑制のメカニズムを分子レベルで知ることはがん化のメカニズムを明らかにし、これらの経路を標的とした新規分子標的薬を創製する上でも極めて重要である。本研究は、分裂酵母をモデル生物として、"PKC活性依存的な細胞増殖抑制という表現型を指標にした分子遺伝学的アプローチ"により、PKCシグナル伝達経路の新規抑制遺伝子として同定したRNA分解システムP-body局在因子が、どのようなメカニズムでPKCシグナルの抑制に関わるのかを、遺伝学、生化学、細胞生物学的手法を用いて明らかにすることを目指す。本年度は以下のことを明らかにした。 Pck2の活性化機構と局在移行の関連性を明らかにする目的で、PKCの活性化因子として知られているリン酸化酵素PDK1の分裂酵母ホモログであるKsg1に焦点を当て研究を行った。具体的にはKsg1の機能低下mutantにおけるPck2のP-body局在を観察した。その結果、Ksg1機能低下mutantにおいてはPck2のP-body局在が優位に低下することが明らかとなった。また、Pck2に存在するKsg1からリン酸化を受ける部位に変異を導入することでもPck2の局在が変化することを確認している。 Pck2の活性化機構と局在移行の関連性をより明らかにする目的で、PKC阻害薬添加条件下におけるPck2のP-body局在を観察した。その結果、いくつかのPKC阻害薬においては、Pck2のP-body局在が阻害された。これらのことによりPck2の活性化機構がPck2のP-body移行能力に大きな影響を与えていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に作成した内因性のPck2, Ded1の可視化融合タンパク質を使用し、ストレス条件下におけるPck2, Ded1のP-bodyに移行する時期の検討を詳細に行ったところ、Ded1はストレスを与えることにより早期にP-bodyに移行するが、Pck2はDed1よりやや遅れてP-bodyへと移行していることが明らかとなった。この移行タイミングのズレがPKCシグナルを抑制する重要なメカニズムを説明できるのではないかと考えており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に作製したPck2およびDed1の各種ドメイン構造を欠損させた変異体や、活性部位に変異を導入した変異体について、酵素活性の変化を測定する。具体的には、各種アッセイ系を用いてキナーゼ活性及びヘリケース活性の測定を行う予定である。また、昨年度明らかとなったPck2とDed1でP-body移行のタイミングが異なる現象について、詳細な検討を行うことで、その理由を明らかとする予定である。
|