研究課題
これまで当研究室において、SNX27がMRP4と相互作用し、発現量制御に働くことを明らかにしていたが、その機序は不明であった。またMRP4の細胞膜発現量の制御機構についてはほとんど明らかとなっていないため、SNX27がその一端を担っていると考え、解析することとした。それによりSNX27がMRP4の細胞膜からの内在化過程に寄与し、分解を促進することを明らかとし、SNX27がMRP4の細胞膜発現量を負に制御する因子であることが示唆された(13.研究発表の雑誌論文)。MRP4は抗ガン剤などの薬物を細胞外に排出するトランスポーターであり、血球においてプリンアナログの活性代謝物による造血毒性を抑制する働きがあることが明らかとなっている。また生理活性物質であるcAMPを基質とし、細胞膜近傍の濃度を調整することでCFTRの機能制御に働いていており、薬物動態的観点のみならず生理学的観点からも重要性が示されてきている。生細胞イメージングによるABCA1の内在化過程におけるSNX27の機能解析では、イメージングの系の確立のためGFP・ABCA1を発現させたCOS-1細胞での検討を行ったところ、この細胞におけるSNX27のノックダウンの効果が明確に観察されなかった。これは以前に私が肝細胞由来培養細胞であり内因性にABCA1を発現するHuh7細胞で見られた結果を再現するものではなかったが、現在これが細胞内でのABCA1の発現レベルの違いによることを示唆する結果が得られており、この点については当初の計画を変更する必要があると考えられた。また肝臓特異的SNX27ノックアウトマウスの作出は順調に進んでおり、その解析によりノックアウトマウスの肝臓におけるABCA1の発現量が野生型マウスに比して上昇していたことから、Huh7細胞での結果を再現するとともに、SNX27によるABCA1の発現量制御が個体レベルで確認することができた。現在ABCA1の発現量変化に伴う機能変化があるかどうかを調べるため血液中のHDL-Cレベル等抗動脈化因子の変化について検討中である。
2: おおむね順調に進展している
SNX27によるMRP4の細胞膜発現量制御機構を解析し論文としてまとめられたこと、またSNX27によるABCA1の発現量制御が細胞レベルにとどまらず、肝臓特異的SNX27ノックアウトマウスを用いた検討から個体レベルでも見られたことが大きな進展であった。これはSNX27とABCA1の相互作用を阻害することによってABCA1の発現量制御を介した抗動脈硬化作用の増強を行うという、当初のスキームの実現可能性を示唆する結果であった。一方生細胞イメージングを用いたABCA1の内在化過程に対するSNX27の機能解析では、実験系の問題があり予定通りの進展とはいかなかったことからこの評価とした。
肝臓特異的SNX27ノックアウトマウスを用いた解析を進め、ABCA1の機能上昇を確認するため血中のHDL-Cレベルやその他抗動脈硬化因子の変化の有無について調べていくとともに、MRP4を含むSNX27と相互作用することが明らかにされているタンパク質の発現変化について検討し、それらの変化による影響を考え個体レベルでのフェノタイプ解析を行う。生細胞イメージングを用いたABCA1の内在化過程に対するSNX27の機能解析では、ABCA1の過剰発現系の問題点が明らかになったことから、内因性のABCA1を抗体標識することでイメージングを行う手法を検討する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The Journal of Biological Chemistry
巻: 287 ページ: 15054-65
DOI;10.1074/jbc.M111.337931