研究課題
本研究において、SNX27によるABCA1の発現量、機能制御を介した抗動脈硬化作用をin vivoで実証すること、またこの制御機構の特異性について検討し、新規抗動脈硬化症薬の創薬ターゲットとして提示することを目的としていたが、Liver SNX27 KOマウスの解析により、当マウスの肝臓において、ABCA1の発現量に大きな上昇は見られないことが確かめられた。また、ABCA1の内在化速度と、分解速度の比較において、内在化速度が遅いことから、ABCA1の発現量の制御における内在化過程の寄与が大きくないことが考えられた。進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は原因遺伝子の違いにより、1型(PFIC1)、2型(PFIC2)と分けられるが、当研究室において、尿素サイクル異常症治療薬4-PBが、PFIC2の原因遺伝子であるBSEPの発現量を上昇させることが示されており、昨年に臨床医との共同研究で、探索的臨床試験を行い、4-PBがPFIC2に著効を示すことを明らかにした。その中で私は、当試験に参加したPFIC2患者の遺伝子解析と変異型BSEPの機能解析と4-PBの作用の検討、また肝生検サンプルを用いた解析を行い、得られた結果と上述の臨床所見と合わせて、4-PBがBSEPの発現量上昇を介してPFIC2の治療効果があるというコンセプトを証明する内容を論文化した((1)学会誌等への発表の番号1.)。PFIC1については、ATP8B1の機能不全によりBSEPの機能が抑制されることが原因と考えられていることから、同様にBSEPの発現量上昇による治療効果がある可能性が考えられたため、こちらも臨床試験を行っており、その結果については共同研究者との医師と共同で論文をまとめ、現在投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
SNX27によるABCA1の発現量制御は細胞レベルでは見られるが、マウス個体レベルではSNX27のノックアウトのABCA1の発現量に対する影響は小さいことを明らかにした一方、遺伝性の希少疾患であるPFIC2に対する治療候補薬として当研究室で見出してきた4PBの有効性を、培養細胞を用いた解析及び臨床試験における検体の評価を行うことで証明し、PFIC2の内科的治療法の確立に重要な知見を得ることに成功したことから上記の評価とした。
SNX27を標的としてABCA1の発現量制御を介して抗動脈硬化作用を増強させることを当初の狙いとしていたが、これまでに行ったSNX27の肝臓特異的ノックアウトマウスの解析で、当マウスにおけるABCA1の発現量に野生型との有意な差が見られなかったことから、計画変更の必要性が生じることとなった。一方で、遺伝性の希少疾患であるPFIC1の原因遺伝子であるATP8B1がABCA1の発現量制御に関与することを、マウス初代培養細胞を用いたノックダウンアッセイから明らかとしており、ATP8B1が欠損しているPFIC1患者の検体でも同様の結果を得ている。そこで、PFIC1とPFIC2は臨床所見による判別は困難である一方、肝移植の予後が異なることから、早期の診断は適切な治療方針を立てるのに重要であるということを考慮し、上記のABCA1の発現量制御をバイオマーカーとしてATP8B1の機能欠損を評価する実験系を構築し、検体を用いてバイオマーカーとしての有用性を実証することを新たに計画している。
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