研究課題
高圧下では、物質は常圧下とは異なる結晶構造・物性を示すため、高圧を有効利用できれば材料設計の選択肢が大幅に広がる。しかし、高圧相は必ずしも常圧下に回収できるとは限らず、本研究課題で対象としたTiO2にも複数の高圧相が報告されているが、その中でα-PbO2型TiO2のみが常圧下に回収可能である。本研究課題において昨年度に、α-PbO2型TiO2がrutile型やanatase型TiO2よりも高い光触媒活性を持つことを見出した。本年度はこのα-PbO2型TiO2のナノ粒子化による光触媒活性の向上と、より高い圧力で安定となるbaddeleyite(Bd)型TiO2の減圧過程におけるα-PbO2型TiO2への相転移機構の解析に取り組んだ。α-PbO2型TiO2のナノ粒子化は市販のTiO2ナノ粒子を出発原料としてベルト型高温高圧装置を用いて行った。合成条件の最適化により、結晶子径100nm以下の粒子からなる凝集体のα-PbO2型TiO2が得られた。この試料に関し、犠牲剤(EDTA-2Na)共存・紫外光照射下における水素発生により光触媒活性の評価をすると、従来のTiO2ナノ粒子よりも高い光触媒活性を示し、有用な材料であることが示された。一方、Bd型TiO2の減圧過程におけるα-PbO2型TiO2への相転移機構に関しては第一原理計算により解析した。Bd型とα-PbO2型TiO2の結晶構造を比較すると、Tiの配列が酷似しており、相転移が主にOの変位で特徴づけられることがわかった。Oの変位に関する活性化エネルギーを算出すると酸化物イオン伝導体のものと同程度の値であり、また、圧力が低いほど活性化エネルギーが高くなることがわかった。これらのことから、Bd型TiO2の常温常圧下への回収のためには、(a)酸素の変位を妨げる元素の添加、(b)衝撃法による圧力クエンチが有効であると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Stat. Solidi RRL
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10.1002/pssr.201409343
Sci. Rep.
巻: 4 ページ: 6568-1-6568-8
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